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    mitk_bjhy

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    mitk_bjhy

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    謎のオメガバース時空生存if。
    アルファの場地さんにベータの千冬がビッチングされるお話。

    なんでも大丈夫な方だけお願いします。

    #ばじふゆ
    bajifuyu

    お題『体調不良』錆び付いたブランコが悲しく鳴いている。
    今週に入って急に冷たくなった秋風を頬に受け、松野千冬は己の頬の熱さを自覚した。

    ここ数日ずっと、微熱のような症状が続いている。
    でも、決して風邪なんかではない。
    自分は今、極端な欲求不満状態なのだ。
    ここ最近は下腹までじんじんと疼くし、なんなら胃までムカムカする。
    それもこれも、長年セフレであった場地圭介との関係を解消したからだ。

    関係の解消を提案したのは千冬からだった。
    アルファのセックスの相手は、ベータの男が一番便利だった。ただ、それだけ。
    解っていて関係を結んだはずなのに、分不相応にわき上がる嫉妬が苦しくて、どうしようもなくて、手離した。

    後悔はしていない。
    けど、手離したものが大きすぎて、どうしようもなく寂しい。
    そう、どうしようもないほど寂しいのだ。

    場地がアルファだと判明したのは高校2年生の夏だった。
    普通は中学3年生ぐらいに第二の性が安定するが、場地は人よりも時間がかかる体質だったようだ。

    区内でも屈指の不良高からアルファが出たのは初めてで、当時は随分と話題になった。
    千冬自身ずっと隣で場地の学力をみてきたから、場地がアルファだと聞いて最初は信じられなかった。
    でも第二の性が安定したからなのか、そこから場地は驚異的な学力の向上をみせ、本当に人が変わったかのように学力が上がった。
    高2の2学期の期末試験では場地から勉強を教えて貰ったし、彼自身ぶっちぎりて学年トップだったため、場地がアルファだと半信半疑だった面々も腰を抜かした。

    頭が良くて、運動神経が良くて、喧嘩が強くて、仲間思い。
    そんなアルファがモテないわけがなかったが、場地は『うぜぇ』の一言でそういう相手を寄せ付けなかった。

    アルファとかオメガを抱くのは面倒だと言うから、ベータだった千冬が身体を差し出して早10年。
    密かに場地へ恋をしていた千冬は、身体だけでも繋げられて幸せだった。

    アルファだと判明してからの場地は、将来の夢を獣医に変え大学に進学して夢を叶えた。
    千冬は場地の勤める動物病院の隣にある大型ペットショップでトリマーの仕事をしている。

    職場が近いから仕事が終われば連絡し合って、ごはんに行ったりどちらかの部屋で飲みあかしたり。
    週末はほとんどどちらかの家で燻る熱を分け合った。
    千冬は出会った頃から変わらず、ずっと場地の隣にいられて幸せだった。
    でも、もう気付けば27歳だ。
    場地は変わらずモテ続けているし、最近は縁談の話も増えたと聞く。

    「マジでめんどくせぇんだよ」

    院長の紹介だというオメガのお見合い写真をテーブルに投げてベッドに倒れ込む場地に、千冬は(潮時かな……)と拳を握りしめた。

    自身が勤める病院の院長直々の紹介とあっては、場地もさすがに断りきれないだろう。
    すぐ結婚なんてことにはならないだろうが、院長の顔を立てるために二人で会うぐらいするだろう。
    もし、そのオメガが、場地の運命の相手だったなら。
    そう考えて強く握った指先が冷たくなっていく。

    今回の相手がそうでなかったとしても、次に紹介されるオメガはどうだろう。
    そもそも、来院する人に運命の相手がいるかもしれない。
    そうなった時千冬は、場地を祝福できるだろうか。

    「運命の相手に出会ったんだよ!」と、幸せそうに笑う場地へ「良かったっスね!」と笑って素直に関係を解消するなんて、出来そうにない。
    みっともなく泣いてすがって、10年分のドロドロした想いを惨めに吐き出してしまいそうで怖かった。

    だから、今のうちにと、手離した。
    場地が誰のものでもないうちに。


    夕焼けに染まった地面を小さく蹴って、揺れる空を眺めつつ疼く腹を軽くさする。

    場地を避け始めて約2か月。
    それまで世界の中心だった場地と離れたら、千冬には仕事しか残っていなかった。

    一人で家に帰ってもすることはなにもない。
    テレビを流して静寂を埋めて、あの人の事を考えないように息をする。
    誰も来ないのに息をひそめるような、不思議な生活。
    場地から何度か連絡を貰ったが、怖くて確認できず携帯の電源をほとんど切っていた。

    そのうちに身体がダルくなって、36.8℃前後の微熱が続くようになった。
    食欲もないし性欲もない。
    それでも溜まるものは溜まってしまう。
    そういえば随分抜いてなかったなと雑に擦っても、そういう気分にはならなかった。

    女の人を抱こうと思っても、香水の匂いに胃がムカムカしたし、抱かれようかとそういうbarに行っても、誰も相手をしてくれなかった。

    唯一声をかけてきた男も、自分から軽く抱き寄せたくせに急に眉間にシワを寄せて「僕トラブルはごめんだから。相手がいるならこんなとこ来るなよ」と店の外へ追い出された。

    首に痕でもあっただろうかと鏡をみると、場地の歯形がくっきりと残っていた。
    関係解消を申し出た最後の夜。
    「じゃあ今日は思いっきり抱かせろ」と場地は言った。
    そうして終始ガッチリと首を噛みながら、何度も何度もナカに出された。
    生でされたのは初めてだったし、まるでラットを起こしたように朝まで抱き潰されてとても驚いた。
    いつもはとても加減をして抱いてくれていたことが解ったから。

    でもそれと同時に、やっぱり場地はアルファなんだと体感もして、ベータの自分では相手になれないのだと思い知った。

    それからはなにをしてもダメだった。
    まず食欲がないから、ゼリー飲料だけを流し込んだ。
    性欲も、結局求めているのは一人なので、場地以外には反応しなくて、燻る身体はそのまま放置している。
    だから、ずっとダルいし、中途半端に熱を持っているのだ。

    2ヶ月経ってもまだ噛み痕の消えないうなじを擦って、はぁあ、と大きなため息をつく。
    自分がオメガだったら良かったのに。
    そうしたらこの噛み痕だって、番の証として一生誇っていられる。
    でもベータの自分には、ただの失恋の傷痕でしかないのだ。

    区の定時放送が夕方5時を知らせている。
    低い位置を飛ぶ飛行機を見上げて、またひとつ大きなため息をついた。

    「あれ? 千冬?」

    後ろから声をかけられて振り向けば、そこには相棒の姿があった。

    「え、タケミっち!? 久しぶりだな」
    「久しぶりなのは千冬が返事くれないからだろ」
    「え、そうだっけ……?」
    「そうだよ!」
    「ごめんごめん」
    「いいよ、おまえブランコいつまでも好きだもんなっ」

    悪戯に笑った花垣に背中を強く押され、ブランコがぐんと加速する。
    急に激しく動き出した世界に最初は笑ったが、近くの家の夕飯の匂いを嗅いだらダメだった。

    ぐっと胃がせりあがって強い嘔吐感に襲われる。
    同時に強い眩暈を感じて、千冬はブランコから落ちた。
    武道の慌てた声が公園内に響いている。
    27歳にもなってブランコから落下して死ぬなんて絶対に嫌だと思いながら、千冬は意識を失った。




    ◇◇◇




    次に目を覚ますと、そこは病院のベッドの上だった。
    状況が理解できなくて、ただ繋がれた点滴を眺めていたら医者と看護師がやってきた。

    「松野さん、起きたんですね?」

    優しそうな医師はベッドの椅子に腰かけて、ニッコリと笑った。

    「気分はいかがですか?」
    「……ちょっとクラクラします」
    「貧血の数値が悪いですからねぇ。それとひとつ確認したいことがあります。松野さんはオメガですか?」
    「え、いえ、……ベータですけど」
    「なるほど……」

    うーんと唸った医師が看護師を見上げた。
    看護師も困ったように眉を下げて笑っている。

    「あの、驚かないで聞いて欲しいんですけどね。松野さんは妊娠しています」
    「は、?」
    「ん~、僕もね、保険証にはベータって書いてあるのに不思議だなぁって思ったんですけど。ちゃんと子宮が出来ていてそこに赤ちゃんがいます」
    「あか、ちゃん」

    掛けられた布団の上から平らな腹を押さえて絶句する。
    ベータで男な自分に、何が起こっているのだろう。

    「たぶん君にはアルファのパートナーがいるでしょう?」

    医師の声に息をのんだ。
    パートナーとは言えないが、千冬が関係を持ったのは一人だけ。
    そう、お腹に子どもがいるならば、間違いなく場地の子どもなのだ。

    「最近の言葉だと『ビッチング』って言うらしいけど、アルファがアルファをオメガに変えちゃうのがあるじゃない? 松野さんもそうなってしまったんじゃないかな」
    「べ、ベータでも、なるんですか?」
    「僕は聞いたことないんだけど、そうとしか説明がつかないかなぁ。検査の結果、君は今オメガになっているんですよ」

    不思議だね~なんて笑う医師をただ眺めていたら、なにかを感じた医師にポンポンと肩を叩かれる。
    自分の身に『妊娠』という言葉が降りかかると思っていなかったから、どんな風に受け止めればいいのかがわからない。

    それにビッチングという言葉も小説や漫画での話だと思っていた。
    詳しくはわからないが、アルファ同士のカップルがお互いに発情している時に片方のうなじを噛むとオメガに堕とすことが出来るというものだ。

    自分は蚊帳の外だと思っていたのでベータの己にそれが起こったと言われても、ただただ困惑してしまう。

    「アルファをオメガに変えるのだって奇跡的なことなのに、ベータの君を変えちゃうなんて、君のパートナーはよっぽど君に執着しているんだね」
    「執着……?」
    「どうしたって君を番にしたかったんじゃないの? じゃなきゃこんなこと起こらないじゃない。熱烈だね」
    「ねつ、れつ……」
    「もし、同意のない行為の上の出来事であれば、病院として警察に届けることもできるけど……」
    「え、あ、いや! そんな、ことは」
    「そう?」

    ドキッとして反射的にうなじを手で庇ってしまう。
    ニコニコと笑う医師は千冬が何が言うのを待っているみたいだった。
    驚いたし、まだ実感もないが、あの人との子どもがお腹にいるのなら、ここ最近の微熱も嘔吐も説明がつく。
    欲求不満なんだろうなんて、のんきに考えていたのに、この腹に命が宿っているなんて。

    「赤ちゃん、は、俺のお腹でもちゃんと育ちますか、ね?」

    薄っぺらい男の腹。
    こんな腹でも、子どもを育て守れるのかが一番不安だった。
    場地が明確な意志を持って、ビッチングをしたのかはわからない。
    偶然そうなってしまった可能性もある。
    それでも、それほどの強さで自分を望んでいてくれたなら……。
    もう望まれていなくても、たとえ一人でも、一生掛けてこの手で大切にしたい。

    「エコーで診た限り正常な子宮でしたから、きっと大丈夫だと思います。まずは検診へ通ってもらって、しっかり見守っていきますからね」
    「妊娠手帳ももらってきてくださいね」


    医師と看護師に笑いかけられて、鼻の奥がツンと痛んだ。
    色んな感情がごちゃ混ぜになって、まだ心が追い付いていない。
    偶然だったらどうしようとか、迷惑なんじゃないかと、不安にも思う。
    それでも、嬉しいことは揺るがなかった。

    「付き添っていた人がパートナーかな? 呼んできましょうか」
    「あ、いや、彼は友だちです」
    「千冬!!」

    看護師の言葉に慌てていると、大きな足音が廊下から響いてきた。
    そうして同時に名前を呼ばれて、ビクリと大きく肩が跳ねる。

    「ば、場地さん……」
    「あ、パートナーの方かな? じゃあちょっと色々話し合ってもらって。点滴が終わったら教えてください」

    そう言って医師達が部屋から出ると、大きな手に肩を捕まれた。
    その強さと熱さに肩がビクリと跳ねる。

    「タケミチが連絡くれた」

    久しぶりに聞く声が好きで、変わらずまっすぐな眼差しが好きで、喉の奥がひきつれる。
    こんなに好きなのに。
    こんなにも強く惹かれるのに、どうして一度でも、この手を離してしまえたんだろう。

    「ガキ、できたのか?」

    うつむく千冬の顔を覗き込んで場地が言う。
    無意識にお腹を庇って、一度小さく頷いた。
    息を吸うにも空気が詰まって、言葉がうまく紡げない。

    「ばじさ、ん……オレ、オレ……っ」

    堪えられながった不安が溢れてほろりと鼻筋をたどって落ちる。
    それを見て、場地は力強く千冬を抱き締めた。

    「勝手してゴメン。でも、オマエに終わりにしたいって言われて頭に血が上った。別れたくなくて必死だった」
    「場地さん……」
    「なあ、離れんなよ。オレの気持ち無視すんな。ベータでもなんでも、オレはオマエが好きなんだよ。お前としか番たくねぇ」

    まっすぐな睫毛の奥で、とび色の瞳が揺れている。
    ああ、傷付けてしまったんだなと、それをみて理解した。

    「嬉しい、です。好きって、言ってくれて。オ、オレもずっと、好きだったから……っ」
    「知ってる」

    温かい背中を抱き締め返すと、耳元で場地が安堵の息をもらした。
    それだけで、自分がどれ程必要とされていたか解って、きゅうきゅうと心臓が締め付けられる。
    ふわりと香る場地の匂いに、身体が楽になっていく気さえした。

    「セフレったってもう10年だろ。オマエもオレの気持ち理解してっと思ってた。ちょっと恥ずかったし。でも、伝わってなかったんだよなぁ。そんで不安にした。ゴメン」

    ずっと欲しかった優しい言葉が千冬の胸を癒していく。
    眉間にギュッと皺が寄って、心が満たされていくのを強く感じた。

    「ばじさぁ……っ」

    情けない声で名前を呼べば大きな手に頭を撫でられる。
    ああ、本当に、幸せで溺れてしまいそう。
    場地と抱き合うことで、お腹がポカポカと熱を持っていく。
    途切れそうだった二人の関係を繋ぎ止めてくれた天使が、ここにいるんだと嬉しくなった。

    「ねぇ場地さん。妊娠手帳もらい行くのついてきてくださいね。オレ一人だと恥ずかしいんで」

    わざと明るく歯を見せて笑えば、場地は照れたように頬を掻いた。

    「なぁ、千冬ぅ。堕としてすぐ妊娠するなんてよぉ……オレら相性良すぎじゃね? そんなんもう、運命だろ」
    「へ……?」
    「オレ、子どもたくさん欲しいからよ」

    犬歯をむき出しにして笑う場地の笑顔が眩しくて、千冬は布団の中へ逃げた。
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