思いがけないプレゼント「ただいま、星塵。...星塵?いないのか?」
いつも通り宋嵐が家に帰ると、真っ暗だった。いつもならこの時間は既に家にいるはずだし、そもそも鍵も開いていた。となると、何かあったのかもしれないと瞬時に考え、最悪の場合が頭をよぎった宋嵐は、慌ててリビングへ足を踏み入れた。
「星塵、無事かっ...?!」
バンっとドアを開ければ、突然破裂音が鳴り響きビクリと身体が固まると、そこには音の元凶であろうクラッカーを持った星塵がいた。
「お誕生日おめでとう、子琛!」
突然のことに一瞬呆けた表情になるもすぐ我に返った宋嵐は、自分のことのように嬉しそうに微笑む星塵の身体をギュッと抱きしめて安堵した。
「...お前に何かあったのかと思って肝が冷えたぞ。全く...驚かせるには十分すぎる」
「!ふふ、ごめんね子琛。でも、こういうのもいいでしょう?」
穏やかな笑みを浮かべてそっと抱きしめ返せば、身体を離して宋嵐の手を引き、夕食が用意されたテーブルへと導く。
「さ、沢山用意したので食べて下さい。ケーキもありますからね」
「あぁ、有り難く頂く」
同じ学部の後輩で、料理が得意な薛洋と阿菁に手伝ってもらい、宋嵐が帰ってくるまでの間に用意した料理がテーブルにズラリと並んでいた。
「頂きます」
「どうぞ、召し上がれ」
星塵は、宋嵐への想いを込めて作った料理を美味しそうに黙々と頬張る宋嵐を嬉しそうに眺めながら幸せなひと時を過ごした。
おおよそ二人分とは思えない沢山の料理をものの見事にペロリと二人で完食すれば、用意してあったケーキも平げ、二人で洗い物をしながらいつも通り今日あった出来事や講義の内容など、取り止めもない話をした。
「子琛、改めてお誕生日おめでとう。その...何を贈れば子琛が喜ぶか色々考えたんだけど、一目見てこれだって思ってね」
「開けてもいいか...?」
プレゼントを受け取った宋嵐が尋ねれば星塵は恥ずかしそうにコクリと頷き、そっと箱を開けた。
中には、シルバーのブレスレットが入っていた。
「ブレスレットか、いいな」
「これくらいのアクセサリーなら邪魔にならないかなと思ったのと、あと...その、君にとてもよく似合いそうだったから」
宋嵐は大切そうに箱から取り出し、早速手首に付けてみれば満足そうな笑みを浮かべた。その様子に、星塵はどこか安堵したような表情になり、ブレスレットを付けた宋嵐の手首を撫でた。
「うん、思った通りとてもよく似合ってる...。凄く素敵だよ子琛」
「お前が俺の為に選んだものなら何でも嬉しいが、そう言って貰えると余計に嬉しい」
白い頬を僅かに赤らめながら宋嵐を褒めれば、宋嵐はそんな星塵の頬に手を添えて穏やかに微笑みかける。
「有り難う、星塵。このブレスレット、大切にする...」
「ふふ、どういたしまして。えっと...それと、実はもう一つ...あの、プレゼントが...あって......」
「ん?まだあるのか?それは嬉しいが、二つも貰っていいのか...?」
満足そうに微笑んだ星塵だが、段々と歯切れが悪くなり再び頬を赤く染まっていく様子に、宋嵐は不思議そうに首を傾げた。
(言わなきゃ、あの言葉を...。こう言えば子琛は絶対に喜ぶって太鼓判を押してもらったし...!よし...!)
「...子琛、もう一つはね...」
決意を固めた星塵は、ポケットの中に忍ばせておいたラッピング用のリボンを取り出して自身の首に巻き、リボンを作っておずおずと顔を上げた。
「私が、プレゼント...なんだ。受け取ってもらえる?」
星塵の一言に、宋嵐は衝撃を受けて思考が一瞬停止した。黙った宋嵐の様子に、星塵は一気に恥ずかしくなり慌てて自身のリボンに手をかけ「あのっ、子琛!ごめんなさい、変なこと言っ...」と言いかければ、宋嵐は突然ガシッと星塵の手首を掴んだ。
「!子琛...?」
「俺へのプレゼント、なんだろう?」
優しく星塵の手首を離せば、そのままシュルリとリボンを解き、床へと落とした。
「っ...!あ、子琛...」
星塵は、この眼差しの意味を知っている。ゾクリと期待に唇を震わせれば、答えはもう決まっていた。
「はい...。子琛へのプレゼントですから...」
「あぁ、有り難く受け取らせてもらう...星塵」
星塵が目を閉じれば、宋嵐は星塵の唇を貪るように口付けた。