曦澄② ぽっかり空いた心の隙間を、藍曦臣が埋めていくのに時間はかからなかった。
二、三日に一度、藍曦臣は夜になるたびに江晩吟の部屋に訪ねてくるようになった。二人で温かい茶を一杯飲む間だけ他愛もない話をして、静心音を聴かせてもらう。藍曦臣が来てくれた日は、嫌な夢を見なくなった。
「昨日の稽古、あなたは少々手を抜いた気がする」
「江宗主相手にそんなことしません」
昨日の稽古、初めて江晩吟が二勝したのだ。怪我も完全に癒え、衰えていた体力もすっかり回復したらしい。藍曦臣に勝てて嬉しいはずが、素直に喜べなかったのは目の前の男がちっとも悔しそうでないからだろう。
「なら今度は、あなたは朔月と裂氷を両方使ってくれ。俺も紫電と三毒を使う」
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