その日、作戦室にやって来た弓場の姿を見て、神田は目を丸くした。
「どうしたんですか、その恰好」
「通り雨に打たれちまってな」
頭から靴の先までびしょ濡れのありさまで弓場は肩をすくめた。
「だったら換装すれば良かったのに」
「どのみちトリガーオフすりゃずぶ濡れに逆戻りだ」
「そりゃそうですが」
着替えを置いておいて良かったよ、と弓場はポケットに入れておいた携帯端末やキーホルダーをテーブルの上に置いた。
が。
「……どうした?」
「い、いえ」
こちらを見はしたものの、目を逸らした神田に弓場は眉をひそめる。が、すぐに合点がいった。ぐっしょりと濡れた結果羽織っていたプルシャツが貼りつき、タンクトップこそ下に着ていたものの、肌があちこち透けて見えていた。
「ガキでもあるめーに、この程度で何発情ってんだよ、おめェーは」
弓場の言は図星らしく、神田は「すんません」と苦笑いして今度こそ弓場から視線を引き剥がした。
だが、ひのふのみ、と弓場は指を折って数えてみる。
「いや、タマってる頃だな。抜いてやる、来い」
「……え」
肌に不愉快にまとわりつくシャツを脱ぎ捨てた弓場は、戸惑った顔の神田の胸倉を掴んで立ち上がらせると、奥のベイルアウトマットへと促した。作戦室の扉を内側からロックするかすかな電子音が、息を呑んだ神田と黙ってボトムも脱ぎ捨てる弓場だけの空間にやけに大きく響いた。