【フィガファウ】感情のあとさき『感情のあとさき』
窓の外、大きな声が聞こえた。テーブルをはさんで正面、そこに座っていた彼の視線が、フィガロを離れそちらについと向けられる。2階にあるこの部屋の窓からは、満開の落月華の様子はよく見えるが、階下の様子までは分からない。
フィガロにとっては威嚇にもならないようなそれは、耳障りではあるけれど聞きなれたものである。しかし治安の悪いこの街の中でも、暴力的なことにおいては表立っては秩序が保たれているこの花街の中では珍しいものだった。
華やかな大通りからすこしばかり離れ、この街で働くものたちが住まう家が建ち並ぶ地区。裏に小さな船一杯ほどならば走ることができる程度の水路があり、一階では妓楼や飲食店にも肉をおろすし、小売りもする肉屋が入っている。その二階が、いまフィガロがいる場所だ。
本来の住まいは別にあるのだけれど、用があって呼び出された時に近寄るくらいで、そこにはほとんど帰っていない。フィガロはそういうものだと、周囲も理解しているので、特に何かいわれたこともない。呼び出されれば応じるし、属する組織にとって有益な情報を得たならば活用することもある。
この街きっての武闘派ベンティスカファミリー、その構成員である。組織を抜けるつもりもないのだけれど、ここにいるフィガロは、そういったものとは無縁の、マフィア、チンピラ、一般人、関係なくただそこに治療を必要とする者、という点さえあてはまればなんでも診る。そういう医者である。
ここではファミリーの一員らしい大仰な羽織も着物も袴も着ていない。それは信頼できる妓楼の一つに預けてあった。いまはもっと気軽な、シャツに細身のパンツ。服の分類でいうならばパンテーラファミリーに近いのかもしれないが、一般人としてはごく普通の恰好だ。
ファミリーからここに来る際に、その妓楼に寄ってから着替え、また、戻るときもそこで着替えていく。緊急時のための予備の一式もここにはおいてあるけれど、それに袖を通したことはいまのところない。
昔、というには最近だけれど、以前までの抗争ばかりだった時代にくらべれば、ある程度の緊張感はあれどもこの街は穏やかになったものだ。
ほかにも大小それなりの数のマフィアは存在するが、その中でもその裏社会の三大勢力と言われる、武闘派ベンティスカ、秩序のパンテーラ、自由なルナピエーナ、この三すくみができあがった昨今、激しい戦闘をともなうような抗争はそうそう起きることはない。
彼もそれがわかっているのだろう、窓の外に向けていた目がまた、フィガロに戻ってきた。
「それで、なにか成果はあったかな、ファウスト」
ファウストは、持ってきた荷物をテーブルの上に広げた。メスにハサミ、ステンレスのトレーなど、金属製のそれらの手入れを定期的に彼に頼んでいて、彼は手入れの終わったそれと交換に手入れの依頼を受けて帰っていく。
ルナピエーナファミリーの属し、鏡屋を営むファウストは、そういう理由で定期的に闇医者フィガロのもとを訪れていた。
鏡屋は本来、鏡に関するものを取り扱うのだけれど、この街でそんな限定的なことは言っていられない。手先の器用なファウストは、妓楼の姐さんたちが求める繊細な細工の鏡も拵えるし、彼女たちを飾る装飾品の手入れも行っている。だからこうして表向きには医療器具の手入れを頼んでいる、ということしていた。
フィガロはある男の情報を求めている。ファウストが属するマフィア、ルナピエールファミリーのボス、ムル。
ある夜、重傷を負ってフィガロのもとを訪れた彼は、あらかたの治療が終わり、動ける程度に回復した時、同時期にフィガロのもとで治療を受けていた子供と出会った。フィガロが治る見込みをついぞ見出すことのできなかったその子供。その時のフィガロにできることといえば、なんとか細く長く命をつなぐことだけだ。医療は日々進歩する、生きていれば、死ななければ、治療の方法が見つかるかもしれない。一日中ベッドの上で、ただ窓の外を診ることしかできなかったとしても。
そんな子供を彼は連れて行った。しばらく経ったある日、連れていかれたその子供が、ルナピエールに属するものが身に着けるような服を着て、街を歩いているのを見た。寝たきりだったころから想像できないほどに元気そうに、活発に。
この短期間で、そんなことできるはずない。それとも自分が何か見落としていたのだろうか。知りたい、ただ、知りたい。ムルが何をしたのか、ムルが何を知っているのか、ムルのことが。
自分で近づくほうが早いと思ったのだけれど、そのためにはベンティスカファミリーを抜けなければならない。それほど顔は売れていないほうだけれど、そういう風に立ち回ってはきたけれど、ムルはフィガロという闇医者がどこの誰であるのか知っている。
それは彼が重傷でフィガロのもとにやってくる前、ムルとはまた別の1人の男、瀕死の重傷を負ったルナピエールのナンバー2であるシャイロックを連れてきた時だ。
実際やってくるまでは闇医者の正体を知らなかったようだが、フィガロの顔を見てすぐに、おやベンティスカの頭脳がこんなところで医者の真似事とは。と言ってきたのである。
治療の甲斐なく、その場で死にはしなかったけれど助かる見込みはないと彼に告げればムルは、疑うことなくそうかと言って、動かせばただ死に近づくだけの、動かさなくても死に向かうだけのシャイロックを連れてどこかへ消えた。
そういうわけで、ムルはフィガロがベンティスカの者だと知っている。ルナピエールに近づくためには、ベンティスカを抜けたという確証と、それらしい理由を提示しなければならなかった。だが同時期に起きた、弟同然に育ってきた男がファミリーを抜けると宣言した際のひと悶着を目の当たりにし、どうにも身動きがとりにくくなってしまった。
「どこかに籠っているわけではないようだ。いまはそこかしこを飛びまわって、誰か、か何かを探しているらしい」
「そう」
ファウストのことは、以前の抗争が絶えなかった時代から知っていた。
アレクとファウストのグループは、マフィアというには一般人で、一般人というにはこちらに近い。白を一般人、黒をマフィアと色で例えるならば、彼らはグレーだった。一般人の中では生きづらいものが集まって、けれど一般人に戻っていくものも、マフィアになるものもいる。そういう群れ。いまのルナピエールに近かったのかもしれない。そして、自分たちの居場所を守るために、戦っていた。
育った場所がマフィアのもとであったフィガロからすれば、他人事のような一般人の世界よりも、彼らのほうが自分に近く、甘さを感じながらも少しだけまぶしかったのを覚えている。
ベンティスカでもパンテーラでも、もちろんルナピエールでもない組織との抗争で、ファウストをかばって致命傷を負ったという彼の親友のために、すこぶる腕の良い闇医者としての噂を頼りにフィガロのもとにやってきた。けれども、フィガロのもとにやってきた彼の親友はすでに、ファウストの背の上でこと切れていた。そうなってしまってはフィガロにはどうすることもできず、ただ、悲嘆にくれるファウストにありきたりな慰めの言葉しかかけられず。
彼らの率いていたグループが壊滅し、どこかへと姿を消したと聞いていたファウストがフィガロのもとを訪れたのは、組織を抜けることもできないフィガロがどうやってムルに近づこうかと考えているときだった。
あなたなら死者を生き返らせることはできますか? と腹の探り合いもなにもなくまっすぐに問われた。思わず、きみはもう少し駆け引きを覚えたほうがいい。と答えてしまってファウストをひどく怒らせ、暴れられたことを覚えている。知らなかったから、悔しかったけれど知らないと答えた。知らない、けれども可能性はある。と。
あの子供の活発な姿。あれほどの重傷を負いながら、これまたそんなことなかったかのように、相変わらずルナピエールのナンバー2にい続けるシャイロック。彼ら以外にも、そういうものがこの街にいることを、フィガロは知っていたから。
ファウストならばルナピエールに属することができる。フィガロならば、生き死にに関する情報が集まってくる。取引を持ち掛けたわけではないけれど、自然と一致した利害に、フィガロとファウストは手を組んだ。
情報の交換と、妓楼で姐さんたちに相談を受けがちなファウストにフィガロが医療の知識や資料をあたえる。時には彼に連れられて往診もした。
以前使っていた一軒家を離れて、闇医者としての拠点をここに移したのは、医者稼業はベンティスカには内緒で行っているので、一か所にあまりとどまらないと決めていたからだが、そこにルナピエールに属した彼と会う利便性もくわえられた。
「ムルがなにを思い、何をしているのかまではまだ分からない。シャイロックには連絡をよこすこともあるようだが、僕はまだ直接彼に会うこともできていない」
ファウストが申し訳なさそうに視線を揺らすので、フィガロは鷹揚に笑って見せる。駆け引きや腹の探りあいをあまり得意としない彼が、シャイロックに直接探りをいれるなどやめたほうがいいに決まっている。いまはシャイロックに近しい少年に、文字などの教えを請われることがあるらしいから、焦らずにじっと耳を澄ませていればいい。
「俺のほうもきみの求める情報は、まだつかめていない。こうして足を運ばせているのが申し訳ないくらい」
「それは、かまわない。あなたがこちらに来るよりずっと安全だろう」
それにしても、とファウストが続ける。
「なにも進まないな」
「まあ、焦っても仕方ない。どんな情報でも最新のものを知っておくことに不利益はないからね」
死んだ人間を生き返らせる、そんなこと本当に可能なのだろうか。それはもう医術の範疇ではなく、ほかのなにか、魔法や錬金術といったたぐいか、あるいは科学の領分だろう。医療の分野においてなら、ムルにひけはとらない自信はあるけれど、果たしてほかの分野においてはさほど興味をもっていきていない。
フィガロがそれを叶えてやれたなら、よかったのに、と時折思う。
アレクの遺体を、ファウストはどうしたのだろうか。どこかに保管しているのか、埋葬したのか、そういう話を彼はしない。まさかそのまま部屋に置いたりしていないだろう、彼から腐敗臭を感じたことはないから、おそらく。
ファウストはひとつ瞬きをしてから、躊躇いがちに口を開いた。ここから先の言葉は予想できる。いつもの流れだ。お互いの状況に進捗がないこともここ最近はいつものことなのだけれど。
「大丈夫なのか」
フィガロを一般人、医療免許とやらも持たずに、やってきた誰もかれもどんな症状だろうと治療する闇医者と言われるフィガロが一般人であるのかはさておき、だと思っているファウストは定期的にこうして、フィガロの心配をする。
「こんなところでって? 大丈夫だよ。ずっとこの辺りで育ったんだ、治安の悪さは知っている。それに俺に助けられたやつらは俺の利用価値を知っている。そして、なくした時の損失を計算できないくらいの愚か者に負けるほど、ひ弱じゃないしね。武器がないと思う? たくさんある、きみが磨いてきてくれたメスだって、使おうと思えば簡単に人を傷つけることができるんだから」
「これは」
ひとを救うためのものだろう。ファウストがテーブルの上に広げた、彼に手入れを依頼していた器具たちに目線をおとす。丁寧に手入れされたそれらが、覗き込むファウストの顔を映した。
綺麗だ、と思う。ファウストの磨き上げたメスの光沢、それに映りこむファウストが。
あきらめてしまえばいいのに、アレクを生き返らせるなどということ。けれどそんなことを言う権利も、理由も、フィガロは何も持ってはいなかった。
不可能だと言ってしまえば、不可能だと証明されればあきらめるのかもしれない。けれども可能性はあって、フィガロはそれがゼロではないと知っていて。嘘をつくには、遅すぎて。
育ての親のようで兄のようなボスの片割れを失った穴は、フィガロでは埋めることができなかった。だから、埋められない穴ができないように、ひとが大事な人を失わないように、命を助けるための知識をたくさん得た。それでも、まだ間に合わない。手が届かない。
死んだ人間を生き返らせる、そんな夢のようなことができたなら、亡くしたものの埋められない穴に苦しむ人を減らすことができるのではないか。そう、フィガロは思っている。
ファウストの穴も自分では埋められない。アレクを生き返らせたら彼の穴は埋まるのだろうか。埋まるのだろう。あの荒廃の時代、一世を風靡した輝きを、また取り戻すのだろう。
フィガロには穴になるような者はいない。共に育った弟のような男が、組織を抜けた時にも、愚の骨頂だという嘲笑と、そんなものかという諦念とわずかな落胆と、命を懸けるほどのものに出会ったことへの認めたくない羨望があった。
フィガロのいなくなった場所が、埋めることのできない穴になるような者もきっといない。医者を失った、組織の人間をひとり無くした、という損はあるだろうが、それだけだ。医者でもなく、組織のものでもなく、なにものでもない、ただのフィガロの場所はどこにもない。時折それが、ひどく、苦しい。
ファウストを前にすると、普段から頭の片隅にある感情が首をもたげるのは、自分が何かを彼に求めているからだろうか。すべてのことには理由があるはずなのに、なぜそうなのか分からない。客観的に俯瞰して、自分のこともそうして駒のように扱うことにたけているはずなのに、自分の感情も細分化し観察し、抑制することは容易いことのはずなのに、それがうまくいかない。
わからないから少し怖い、感情が首をもたげるから少し苦しい、けれども彼の来訪は喜ばしく、話せば心浮かれ、そして別れを名残惜しく感じる。
「一杯飲まない?」
情報交換は終わった。彼が席を辞する言葉を吐くまえに、この時間を伸ばす言葉を吐いていた。これだって衝動的だ。言った後、おかしな流れではなかっただろうか、と心拍数があがった。
こうやって情報交換のあとに一杯ならず酒を酌み交わすのは初めてのことではない。不自然ではないはずで、おかしなことでもない。返事をじっと待っているのも変な気がして、治療代の代わりにもらったいい酒があるんだと、席を立ちながら酒をしまっている棚に向かった。
ファウストに背を向ける形にしたのは、断る方の負担が少なく、また断れられたときの顔をも見られずに済むからだ。
背後で席を立つ気配がする。今夜はだめだったか、とファウストからの断りの言葉を予想しながらそれでもフィガロはまだ、酒を選んでいるふりを続けた。
「いただこう」
離れたところで聞こえる、器具をしまっている場所に彼がそれを片付けたのだろう小さな金属音とともに肯定の返答。小さく飲んだ息を同じくらい小さく吐いた。俄然、酒を選ぶのにも気合が入る。どれにしようか。棚に並ぶ酒瓶はどれも自信をもってすすめられる逸品ばかりだが、はたしてファウストが好むのはどれだろうか。ウイスキーか、ワインか、白ワインにしてもいいだろうか。最近いちばん気に入っている白ワインに決め、それに合わせたグラスを二脚。
「いつものところに置いておいたけど、それでよかったか?」
「うん、ありがとう。あとでお願いしたいものも渡すね」
ファウストの気配が近づく。テーブルを越え、フィガロの背後に。敵意はない、けれども少し緊張しているような息づかいのようだ。なぜ。
振り向けば予想通り、ファウストはすぐ後ろにいた。グラスを受け取ろうとのばされた手の上に二脚ともにゆだねると、彼は小さく微笑む。顎を引いた彼の色づいた眼鏡の硝子の向こうの紫の瞳、わずかに上目遣いなのはファウストより上背のあるフィガロに向かえば自然なことだ。
「実は、つまみを持ってきている」
「飲む気まんまんじゃない」
「あなたの家にある酒は、僕じゃそうそう手が出るようなものじゃないから」
「秘蔵の酒が狙われてる」
「ふふ」
栓を抜いたボトルを彼の持つグラスにむかって傾ければ、淡い黄金色がとろりと注がれ落ちる。いい色だと目を細め、くんと香りを確かめるファウストの耳飾りがきらりと揺れた。
「それで、つまみは何かな?」
「ピクルス」
「ああ、いいね」
「チーズもあるけど、それは僕用」
「えー」
「冗談だよ」
また楽し気にファウストが笑った。軽くグラスを重ねれば、小さく響く音が鼓膜を揺らす。
先ほどはさして興味をひかれなかった窓の外、この街のそこかしこに生えている落月華。満開の薄紅色がちらちら散って、ひらひらと舞う花びらか、赤い灯りに映える街か、そちらに目を向けたファウストが、グラスに口をつけ、美味しそうに目を閉じる。その様子を見てからフィガロもグラスに口をつけた。
鼻腔の奥から抜ける香りと、舌にさわやかな味わいは知っているものと同じで期待通り。ファウストの口にもあったようで、うっとりと瞼を開いた彼がフィガロを見た。
「美味しい」
「口に合ったようでよかったよ」
空になったグラスを向けられる。ご所望のままにお代わりを注ぐフィガロに、ファウストが一歩近づいた。
「姐さんたちに、聞いたんだけど」
「うん?」
注ぎ口を見つけていたフィガロが視線をあげると、こちらを見つめていたファウストと目が合った。続きがありそうなところで言葉を切ったまま、彼はその先を口にせず、少し顎をあげてじっとフィガロを見つめている。
揺れる、何かが。動く、心臓の奥が。首を傾けて顔を近づけてみても、彼は身体を引こうとしなかった。その後ろは壁ではない、逃れる場所はどこにでもあったのに。先ほどの乾杯のように、グラス同士がかちんとぶつかる。もうすぐ間近にあるファウストの、色硝子でその色を隠しているはずのその紫が、ゆっくりと瞼の奥に隠される。それに誘われるようにフィガロもゆっくりと目を閉じた。
予想通りの柔らかな感触。唇が重なる。けれども同時に色硝子の眼鏡が鼻先にぶつかって、フィガロは我に返るように目を開いた。
「あ」
吐息交じりの声は先ほどまで重なっていた二人の唇から同時に発せられたもので。小さく跳ねるように後ろに身を引いたファウストと、衝動的に動いた自身への驚愕に、同じように身を引いたフィガロとの間に距離ができる。
身を引いていたファウストが一歩前に進んだ。フィガロは窓枠にボトルを置くと彼の顔に手を伸ばす。眼鏡のつるに指をかけ、それを取り去ると反射的に目を閉じたファウストに再び口づけた。
すべてのことには理由があって、行動には根拠があるはずなのに、いま彼にこうしたいと思うフィガロの中には衝動しかない。こんなことをして何になるのだろうか。こんなことをしていいのだろうか。
客観的に見たら理解できるのだろうか、己のことが。どれほど自分自身で自分を客観的に見ようとしても、内側からではうまくいかない。ならば、外側からフィガロを見ているファウストからは、フィガロがなぜこうしたいのか分かるのだろうか。
「すぐ近くで五秒見つめて、したくなったことをしてみたらいいって」
次に唇が離れたときに、ファウストがようやく続きを口にした。
「してみて、どうだった?」
「こんなことをしていいのか、と思った」
ああ、そうだね。俺も同じだ。そういう代わりにもう一度いいかいと尋ねてみれば、紫色の目が一度大きく見開かれ、それから口元に薄く笑みを浮かべながら、彼はいいよと目を閉じた。