類司オメガバース顔に不思議なマークをつけた男に気をつけろ。
そんな話を聞いたのはいつの事だったか。天馬司22歳。性別男。第2の性別はΩ。学生の頃はこの性が原因で色々あったがその色々のおかげ成長した。ヒートは厄介だが薬を飲めば多少は軽くなるし職に問題は無い。表面上は。司はその性別故もてはやされる。Ωなのに、Ωだから。そういった言葉を何度聞いただろうか。大体第2の性は関係ないだろう。αがいないと生きていけないとかまあ分からなくもないが人生の成功は関係ないと思う。そういった見方の方がいいこともあるとは理解してるけど。
「あー、今日も終わった!明日は一日オフだし、今日はのんびり…」
「てめえ、ああ、お前か。噂のα。こりゃ綺麗な顔だ。Ωと同じくらいいいって聞いてるぜぇ」
「へえ、じゃあ僕と遊んでよ。暇なんだよね」
「いいぜ?ちゃんと俺の事満足させてくれよ」
無視だ。無視。司はその場を通り過ぎようとしたが一瞬見た金色の瞳に囚われてしまった。そして連れ帰ってきてしまった。学生の頃は誰にでも分け隔てなく手を差し伸べていた。でもそれが良くなかった。βはともかく中にはαもいて司の優しさを勘違いした相手も中にいた。
「天馬、お前、俺の事好きなんだろ」
何を言ってるんだろうと思った。クラスメイトだから助けたのに。それから司は怖くなった。今でこそ夢を叶えて多少マシになったが自分がすることで相手に好意を持たれることが司は怖くなっていた。だから通り過ぎようと思っていたのにあまりにも優しい目でこっちを見てくるから。相手の分の飲み物を入れて渡せばありがとうと笑顔で帰ってくる。自分より少し下だろうか。どこかあどけない感じがする。
「すまないな。楽しみの邪魔をしてしまって」
「別に構わないよ。正直あの手の輩には困っていたんだ」
「そうなのか。αも大変なんだな」
「まあね。そういう君はΩかな」
「なんで…どうして…」
「気づいてないの?さっきから甘い匂いずっとしてるよ」
ヒートはもう少し先のはずだ。なんで発情してるんだろうか。咄嗟に相手を距離を取れば手を取られ離れることを阻止され言われる。
「大丈夫。僕にそれは効かないから。だから気にしないで」
相手の言葉に司は混乱を極める。効かない…どういう事だ。現に相手は発情もしてない。いわゆる特殊なαなのだろうか。よく分からないが。戸惑っていれば「さて、君の名前を教えてくれるかな。あいにく今僕は持ち合わせがなくてね、お礼ができないんだ」と司に名を問いかける。
「は?同い年?嘘だろ」
「ほんとほんと。神代類。22歳。君と同い年」
「詐欺だ…」
「ふふ、よく言われる。」
「類は何をしてるんだ?」
「天馬くん、知らないの?同じ業界なのに」
「同じ業界でも色々とあるだろ」
司の言葉に類はあーそうかと。同じ業界にいても2人は今知り合ったばかりだ。知っているわけが無い。司の方をニコニコ見ながら類は自信につけられたキャッチコピーを言う。
「性別不明のミステリアスモデルrui。あなたのruiはどっち?」
「お前がrui」
「ちょっと待て。嘘だろう。週刊誌に取られていたら」
「大丈夫。あそこにはいなかったよ。」
「そういう問題じゃない!ってか自分の性を安売りするな。もっと自分を大事にしろ。それに…」
「それに?何?あと司くんって呼んでいいかな。いきなり対応変わったけどどういうことかな」
「それは、だって…」
ああ、これはきっとあれだろう。類の性別は明らかになっていない。同性同士だから証明するにはなんの問題も無いはずだ。類は司の手を取って自身の胸と股間に導けば司はそれは見事に固まった。出会ってまだ数時間しか経っていないのに司と類は打ち解けていた。
それからしばらくしてのこと。
「司くん、お疲れ様。一緒にご飯食べに行かない?」
「司くん、今日僕オフなんだ。美味しいお店見つけたから今度司くんも一緒に行こう」
「主演のドラマ見たよ。あの女優さんいい話聞かないからあまり近寄っちゃダメだよ」
待て待て待て。あいつ暇なのか。いやいやそんなわけがない。類の姿をメディアで見ない日はない。その人柄のせいかあとはαというせいなのか知らないが類は引っ張りだこだ。自分と同じくらい忙しいはずなのにちょいちょい連絡してくる。気づけば週に一回類と合ってることに司は気付かない。その時にはいつか聞いた顔に不思議なマークの着いた男に対する忠告は司の頭にとっくの昔になくなっていて。
「はっはっはっ」
息が荒い。仕事が終え家に入るなり司はその場に倒れ伏した。ヒートだ。仕事が終わったあとで良かったと思う。最近は仕事が立て込んでたから薬を飲むことも。早くベッドに行ってこの熱をどうにかしなければ。そんな時だった。スマホの着信音がなかったのは。でる余裕なんてない。苦しくて辛い。
「はぁはぁはぁ…薬、飲めば多少マシになるだろうか」
大丈夫。司は今まで性交したことがない。職業上スキャンダルは避けなきゃいけない。だから打ち上げも程々に切り上げていたのに。今日は仲の良い人に誘われたからついつい飲みすぎてしまった。早くこの熱をどうにかしなければ。薬はどうだったろうか。まだ確か余裕があったような。あぁ、でももう間に合わない。司は焼き切れそうな意識の中自信を取りだし扱き、後ろに指を入れる。後そうは対象を思い浮かべて。単調な作業に司は嫌気がさしていた。そんな時イメージでいいから対象を思い浮かべればマシになると言われたのは。
そうして思い浮かべた対象は…
「司くん、気持ちいい?」
「ココがいいんだね。司くんのここ、ひくひくしててて可愛い、ねえ、舐めていい?」
「恥ずかしいところが丸見えだね。ああ、でもここを僕を欲しがってるね。ねえどうして欲しい?司くんの好きなようにしてあげる」
イメージした類はどこかみだらな雰囲気をまとっていて司を言葉で虐めてくる。もうなんでもいい構わない。この熱を解放してくれるのなら。
翌朝意識を取り戻した司の目に写ったのはいるはずのない存在神代類だった。