また明日もともと体躯が大きいからセミダブルベッドで寝ていたのだが、上背のある男二人にはセミダブルですら狭すぎた。斎藤の泊まる頻度が上がり、どちらかがベッドから落ちる回数が増えたのを機に、ダブルベッドに買い換えた。クイーンズサイズも検討したのだが、独り寝の淋しさのことも考えたら、これでよかったとも思う。
斎藤が泊まる日は、よほどのイレギュラーがなければ一緒にベッドへ入る。たとえばソファで触れ合い求め合ってもつれ込む時も、二人でドラマや読書を楽しんで眠気に従う時も。
今夜は後者だった。寝間着に着替えて歯を磨き、連れ立って寝室へ行き、マットレスに身を預けた。
「ふひひ」
肩に羽毛布団をかけてやると、斎藤はにやける。
「どうした」
「いや、目が覚めても土方さんの顔見られるんだなぁって思って」
「寝穢(いぎたね)ぇ顔だろ」
「俺にしか見せない顔じゃないですか」
「どうだろうな」
「引っかかりませんから。他の男連れ込む人は、俺の着替えなんかのスペース作らないですから」
軽く嫉妬させてからかおうと思ったが、逆に己の恋心を自覚させられてしまう。確かにその通りだ、遊びなら部屋の一角を占拠させたりしない。
歳下の男に告白され、最初はお試しでつき合い始めた。俺の一挙一動で浮かれ、落ち込む様に、いつしか惹き込まれていた。こいつの喜ぶ顔が見られれば、とベッドでの役割も受け容れた。
「おやすみなさい、歳三さん。また明日」
「おう、おやすみ」
斎藤が顔を近づけてくる。目を閉じれば、柔らかい感触が唇に触れた。舌を割り込ませることのない、静かなキスの後、斎藤は土方の首の下に腕を回した。こうして包まれるように眠るのにも、すっかり慣れた。
明日も楽しい、あるいはもの憂い日常が待っている。どんなことがあっても、この居場所があれば乗り越えられる気がする。
かつて『鬼』と呼ばれていた己の変化に苦笑する。己がそんなことを考えるようになるなど。
斎藤の体温と鼓動に、眠気を誘われる。目を閉じて、斎藤と一体になる感覚にしばし酔う。