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    柚月@ydk452

    晶くん受け小説

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    柚月@ydk452

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    ネロ晶♂
    無意識にネロの手料理を全問正解する晶くん

    #ネロ晶♂

    覚えた味「つい、作りすぎちまったな。」
    「でも楽しかったです!さすがはネロさんですね。」
    キッチンの方から、楽しげな笑い声が聞こえてくる。思わず足を向けると、ネロとカナリアが大量の料理をテーブルに並べながら、談笑していた。
    「こんにちは。こんなにたくさんの料理、どうしたんですか?」
    「お、賢者さん。仕事は終わったか?」
    「いえ、これから提出に向かう所でした。美味しそうな匂いがしたから、つい来てしまって。」
    「ふふ、小腹が空いていたなら、ちょうど良いです!賢者様、是非味見してください。」
    「最近、各国集まっての会議やらパーティーが多いだろ?まぁ、なんつーか、刺激を受けたと言うか…。」
    「私もお手伝いする事が多くなってきたので、各国それぞれの伝統料理や郷土料理を深めたいなとお話していたんです。」
    「それでこんなにたくさん作られたんですね。」
    「結局作ってるうちに、どんどん他のものも作り始めたから、当初の目的を見失ったってわけ。」
    「俺としては、大歓迎ですね!とっても良い匂いで、我慢できません。」
    書類を脇に寄せ、晶はテーブル上の料理をじっくりと眺める。こんがりと焼けたパンの香ばしい匂いや、ぐつぐつと煮え立った鍋料理、宝飾の如く飾り付けられたケーキやパフェなど、見るだけでも楽しい。加えて朝から働き詰めだったせいか、ここぞとばかりに身体が空腹を訴え始めた。一つ一つの料理は、それほど量もない。せいぜい半人前がいくつか取り分けられており、味見するには十分なほどだった。
    すると背後からまた、賑やかな声が増える。
    「ネロ、腹が減った。何かくれ。」
    「ごめん、ネロ。シノがどうしてもって聞かなくて…。」
    「腹ごしらえをしたら、すぐに試験の続きをするからな。」
    座学よりも実戦をしたがるシノは不服そうに、口を尖らせる。どうやら試験の途中からだったようだが、タイミングが良い。味見役は、量にもよるが、きっと多いに越したことはない。
    「皆さん、お疲れ様です。ネロとカナリアさんが、各国の料理をたくさん作ってくれたみたいですよ。一緒に味見しましょう。」
    晶の誘いに、東の魔法使いにしては珍しく、隠しきれない歓声が上がる。昼餉には遅いが夕食にはまだ早い、こんな時間だからこそ、選り取り見取りの料理達は魅力的だ。
    晶達は早速、仕事に取り掛かる。
    「ネロ、このカボチャのキッシュ美味しいです!甘味と焼き加減が絶妙で、何度でも食べたいです。」
    「本当だ。キッシュだから副菜とかの位置付けだけど、デザートとしても文句ないよ。」
    「よかったな。美味いものを口にしてきたヒースが言うんだから、自信を持て、ネロ。」
    「だからお前は俺のなんなの…?」
    晶達の喜びの声に、ネロは満更でもなさそうな表情を浮かべていた。伊達に長く料理人をしてきた訳ではないとは言え、やはり生の感想を聞くのは何度でも嬉しく思う。それが好意的であれば、尚更だ。
    「このロリトデポロ、南の国に行った時に食べた物と遜色ないよ。現地の人にも、充分喜んでもらえるんじゃないか。」
    「あ、それは私が作ったんですよ!頑張ったので、嬉しいです。」
    「君が作ったのか。驚いたな。」
    ファウストの素直な賞賛に、カナリアは嬉しそうに微笑んだ。
    その後もわいわいと賑やかな雰囲気が、キッチンを満たしていく。テーブルを埋め尽くしていた皿も、次々に空になっていった。
    「賢者さん、お味はどう?」
    「美味しいです!パエリアは魚介の出汁が染み渡って滋養豊かですし、ガレット・デ・ロワは甘いのにくどくなくて、何個でも食べられそうでした。アスピックは見た目も華やかで、つい崩すのがもったいないですし、山羊肉は迫力満点ですね!」
    「お、おう…。喜んでもらえたなら、良かったよ。」
    味見係としての仕事を全うしようと、つい気が急いて、気合の入った食レポをしてしまう。それくらい、身体も心も満たされたのだ。こんなにたくさんの種類を一度に味わう機会なんて、元の世界でもそうそうないだろう。
    だがここで一つ、疑問の声が上がった。
    「…賢者様、聞いても良いですか?」
    カナリアが不思議そうに、晶に問いかける。
    何かおかしな感想でも言ってしまっただろうか。だが、それならばネロの方から言うはずだ。
    他の人も、何だとばかりに、カナリアを注視する。
    注目を浴びたカナリアは、それすらも気に留めず、晶に向かって言う。

    「どうして、ネロさんの作った料理だと全部分かったんですか?」

    カナリアの疑問に、晶は動きを止めた。たっぷり数秒、いや数十秒くらい時間を掛けて、問われた内容を反芻する。
    「確かに、誰がどれを作ったか、教えてもらってないな。」
    「俺達が来る前に教えてもらってた…わけでは無さそうですね。」
    「僕は全てネロが作って、彼女は手伝いくらいしか担っていないと勘違いをしていたが、彼女自身が作り上げたものも幾つかあるようだな。察するに、賢者が挙げた料理以外が、彼女の手作りか?」
    「そうなんですよ。だから、びっくりしちゃいました。」
    さすがは賢者様ですね、なんて言葉が、どこか遠くに聞こえる。隣に立つネロの顔が見れない。
    自分でも疑う事なく、ネロの料理だと認識していた。無意識にも、彼の料理を、彼の作る味を、身体がもう覚えてしまっていたのだ。
    そっとネロの方へと伺うと、その顔はこちらを見ていなかった。手で顔を覆うように、何かを隠すように。
    だが立ち去ることもなく、そばにいてくれる。

    「…賢者さん。」
    「はいッ!」

    小さな声には不釣り合いなほど、大きな返事をしてしまった。
    周囲の喧騒から切り取られたかのように、ネロの声が耳に届く。

    「…ありがとう。」
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    りう_

    DONE11/14逆トリオンリー「月よりのエトランゼ」で展示していた作品です。
    逆トリで晶くんの世界にやって来たフィガロと晶くんが買い物デートして二人でダーツをしています。
    ご都合主義なので、厄災がどうにかなって、二人はお互いの世界を行き来出来るようになっている…という想定です。
    ※ちょっとだけフィガロ親愛ストのネタバレがあります。
    勝者の願い そこそこ人の多い、昼下がりの商店街。自分と同じく買い物に出ている人や外食に来ている人が多いのだろう。
     彼と連れ立って歩くとちらちらとすれ違う人たちの視線を感じた。その視線は、俺では無く隣を歩く人へと一心に向けられている。それはそうだろう、俺の横にはこの国では見かけない珍しい色彩と、頭一つ飛びぬけた長身、それに整った顔立ちを持った麗人が居るのだから。
     そっと斜め上を見遣ると、彼は珍しそうに立ち並ぶ建物たちを眺めているようだった。色とりどりの看板がひしめき合うように集まり、その身を光らせ主張している。建物の入り口には所々のぼりがあるのも見えた。
     その一つ一つに書かれた文字を確認するように、時折フィガロの唇が開いては、音もなく動く。どうやら看板に書かれた文字を読み取っているようだ。
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