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    はぱまる

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    はぱまる

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    勢いで書いて放置してあったやつを持ってきました。司と瑞希の話、の序盤です。本当にこんな課題が出ることあるのかは知らん。リアリティある学校が書けない人間なので、学校あるあるとか学生あるあるとかのマシュマロを常時募集しております。

    #天馬司
    tenmaji
    #暁山瑞希
    makiyamaRiki

    指定形自由課題 その日、神高全域にとある課題が出された。全学年全クラス共通の物である。自主性を高める為とか創造力を養う為とか理由付けは色々されていたが、そのつまりの課題内容とは、簡単に言えば夏休みの自由研究のような、何をやらかしても犯罪じゃなければ大体許される(!)ような、範囲の広いもの。但し長期休みのそれとは違い、ひとつ条件がある。曰く、複数人で作ったものに限る…というもの。つまりは、誰かと協力しないとダメだよ☆ということである。社会性を養う為やらなんやら理由付けはなされていたが、『じゃあ自主性ってなんだよ』とか『ネットに上げたら絶対叩かれるぞお前ら』とかいう思春期的で反抗的な文句は黙殺され。なんやら、近年に建てられた真新しい学校らしいと言えばらしい、校風の比較的自由な神高の暴走だという声もありつつ、流石変人ワンツーフィニッシュを抱え込んでるだけはあるという皮肉めいた囃し立てもありつつ、ボッチに優しくない日々が始まったのであった。


    「司はもう何やるか決めたのか?」
     席の近いクラスメイト——司が特に仲良くしている者——に声を掛けられ、彼は「いいや、まだ何も」と少々芝居的に首を振った。
    「えっマジで?!」
    「何をそんなに驚くことがあるんだ? まだ提出期限迄は随分とあるだろう」
    「や、ほら、神代とかとさ。なんかやるんだと思ってたから」
     神代類、及び天馬司は、並んで変人ワンツーフィニッシュと呼ばれる神高名物の有名人だ。尚ワンが天馬でツーが神代である。この二人——特に天馬司は神高内に於いて知らぬ者の居ぬ存在であり、皆の(特に現二年生の)共通言語であり、彼を話題に出せば天気以上に話が盛り上がるとされている。
     そんなであるため、司は当然の如く、神代と何かやるんだろうなーと思われていたわけだ。
    「え、今回は変人ワンツーお休みなワケ?」
    「お休みするものなのか? いや、マァ確かに、類はな。クラスメイトに何やら頼まれたらしく」
    「え?! 其奴勇気有るなぁ」
     司と席の近い彼が驚く通り、神高の神代類と云えばなんだか危ない雰囲気を感じる、マッドサイエンティストのような危険な空気とチェシャ猫のような色の有る妖しさを身に纏った、そういう近付き難い男であった。故に、彼に声を掛けたクラスメイト——神高科学研究部の副部長は、とても勇気の有る素晴らしい若者と言えるだろう。未来が楽しみだ。マァ彼はクラスメイトとして、司に対する類、ワンに対するツー、座長及びスターに対する演出家…又幼馴染の歌姫に対する彼もを、それなりに眺めてきた為、「多分、多分だけど根はいい奴」「引き込めば役に立つ奴」と判断して、其処から声を掛けたのであった。……尚、授業中にフフフと怪しげな笑みを零す彼をよく見かける他のクラスメイトは、神代に声を掛ける彼を見て「えっ正気か彼奴」という顔をしていた。
     そんなこんなで、よくドローンやらなんやらを作っているところに目を付けられたらしい類は、科学研究部にてちょっと凄い物を作ることとなったらしく。「司くん、残念だけれど君とは一緒にできないんだ。部活の子達と話したけれど、司くんが混じるのは難しいらしくて。済まないね」と舞台的に肩を落としたのだった。因みにこの台詞は司が当たり前のように「類! あの課題何をやる?! やはりショーに関することか?! オレのこの身が必要であるならば幾らでも——」と宣った、その返事であった。変人ワンも又、ツーと共に何かしらやる気満々だったワケだ。というか課題を言い渡された途端、彼奴ならオレを誘って何かしらしでかすだろうなと考えを巡らせた。その期待(又は覚悟)は裏切られたが、マ然し。この男、声と態度のデカさに反して妙に人の好い者であるとご存じの通り、気を落としたり悪くしたりだとかはなく、ただただ「えっ誘われたのか! 流石だ! 其奴は見る目があるなこの類を選ぶとは! うむ、応援しているぞ! 何をやるのか楽しみだ! でもあんまり迷惑は掛けるなよ?」と、友人としての喜びと座長としての保護者意識からの台詞を吐いたのみであった。

     さて、場所を戻して二年A組。そういう訳で類は誘えなかった、と説明を果たした司に「振られちゃったか〜、ツーってば浮気じゃん浮気」と揶揄いの声を投げ乍ら、クラスメイトは然しと首を傾げた。
    「他にも確か、仲良いのいたじゃん? ほら、一緒にショーやってるっていう、ええと、一年の女子だっけ」
    「ああ、寧々か? 草薙寧々」
    「そうそう草薙さん。あの子とはなんかやらないわけ?」
    「いや、寧々も寧々で頼まれたらしくな」
    「へぇー。人気者ばっかだな」
     そう、寧々は寧々で、部活経由で頼まれてしまったのだ。映画部の部員のうち、ミュージカル映画が好きで寧々とも多少話の合う女子生徒が、頭を下げたらしい。曰く、一緒にミュージカルの研究をやらないか——とのこと。部内には他にもミュージカル好きで彼女と仲の良い者が幾人か居るらしいが、それらには他にやることがあるからと断られ、ようやっと、あまり部活に顔を出す方でない寧々に目を付けたという。「ワンダショのショーも観たことあるよ、草薙さんめちゃくちゃ歌巧いでしょ。凄くミュージカルの歌い方でさ、でもそれ以外にも入れてるのかな——嗚呼その話じゃなく。そんな草薙さんなら一緒に、楽しくできるかなって……。ア、その、私もあんまり人と話すの得意じゃないんだけど。二人だけなら寧ろ、やりやすいかなー、とか。……だ、ダメかな?」……寧々よりかは背の高い彼女の、然しもじもじとした上目遣いじみた懇願に、寧々は折れた。楽しそうだし、全然知らない人とやるよりは気不味さとかもあんまり無いし……と、メリットを考え、頷いたのであった。(因みに初め、あの寧々が自分達でない誰かと、人見知りを殺して勇気を出し手を繋いで協力する、と知ったときの司は、父みたいに感動を見せた。類も兄じみた笑みを見せ、両者共に照れた様子の寧々からちょっとした毒舌を受けた)
    「だからオレは現在フリーだ!!」
    「マジか〜。絶対変人ワンツーフィニッシュで何か面白いことやるんだろうなって思って誘わなかったのに」
    「む? お前は何やるのかもう決めてるのか?」
    「まぁな。ちょっと友達とさ。あ、でも大きい声苦手な奴いるから、もう司は誘えないや」
    「そうなのか。ではフリー続行だな!」
    「だなー。変人ワンツーが何やるかで賭け事してる奴等可哀想。前提から崩れてんじゃん」
    「待て、そんなことしてる奴等がいるのか?!」
    「いるいる。賭けてる物はいい感じの対戦カードとかガチャガチャのシークレットレアとか、そういうのだけど」
    「なんだ玩具か、平和だな……」
     司の言うよう側から見れば平和にも思うが、一歩間違えれば大惨事にもなりうる。何せそれらはところによれば高額で転売されたりもする代物なので。玩具をバカにしてはならない。然しそんなことは露知らず、神高名物・天馬司は「課題、どうしようか……」と、実に学生らしい悩みに陥っていくのであった。




     さてそれと同時期。同じくA組、学年をひとつ下げた其処で、同じような悩みを抱える生徒がいた。名を暁山瑞希。司とはまた違う形で名の広まっている(……)ところもある、可愛らしい見目の不登校児である。
     久方振りに教室へやってきた瑞希はいつの間にやらそんな課題が出されていたと知り(提出期限迄はまだある為、来た時言えばいいかと先生方は判断して特別報せたりもしなかった)、じゃあ杏は何やるの〜と特に気の合うクラスメイトに問い掛け。
    「あー、私は彰人と冬弥と歌について何かやろうかーって話しててさ。まだ具体的には何も決まってないけど〜」
     と、彼女は笑い混じりにそう言い。瑞希は何をやるの?と問われて「何やろっかなー?」と笑い乍ら返した瑞希は。
     いや、協力必須って何?! ゲームのフレンドにフォロー頼むのとリアル人間への協力要請はまた別なんだけど?!
     と、苛立ち混じりに胸中愚痴っていた。青い鳥で呟けばきっと多くの賛同が返ってくるであろう。瑞希はパッと見陽キャの風貌でありつつ、学内の知り合いというものが少ないのだ。否、ただの知り合いであれば多少はいるが。杏を含むビビバスの面々は全滅したし(流石にこの三人の中に混じり込むのは遠慮した)、類も類で他に何かやるらしいし、お姫様とはそんなに仲良いと言えないし(そも寧々は寧々で既に課題内容を決めてある)……、……。と、虱潰しに脳内で候補を消して。最後に残ったその人と、はて自分は協力して何かしらやれるだろうか——と考えつつ。数日後、瑞希はまた久し振りの校舎を歩いていた。
     ナイトコードで聞いたところ、絵名は絵名で夜間クラスの生徒と何やらやるらしく。どうしたものかな、と、購買で買ったパンを食べる場所を探し乍ら、瑞希が向かった先は校舎裏。人のあまり居ない、と思い来たその場所には、なんと予想外に生徒が居た。その生徒は瑞希の知る人物であった。
    「……司先輩? こんなところでご飯食べてるの?」
    「む? 暁山! ああそうだぞ。ほら、陽射しが丁度良く遮られてよいだろう?」
     上を——木漏れ日の原因となっている場所を——指し乍ら笑顔を向けてきたのは、変人ワンツーの声が大きい方と名高い彼である。確かにそうだねと返しつつ、瑞希は、
     いやこの先輩が居るにはちょっと薄暗すぎない?
     という考えも滲みながら、座る彼のそばに近寄った。こういう場所を好むとは、思っていなかったが故の意外性を感じていた。
    「ひとり? あ、お弁当だ」
    「ああ、一人優雅にランチタイムだ! これはオレが作った、スターに相応しいランチでな」
    「え、先輩が作ったの。すごーい! あ、ネェ、ボクも此処で食べようかなって思っててさ。ご一緒してもいい? それとも優雅なランチタイムにはお邪魔かな」
    「いや、構わんぞ! ほら此処に座るといい!」
     司は笑顔で了承し、何故かハンカチを取り出して己の隣に敷き、瑞希の席を用意した。其処へ素直にニコニコ座り乍ら、やっぱりこの人変人だなひとのこと言えないけどと思いつつ、瑞希は購買で買ったパンとジュースを取り出すのだった。
     一緒に食べよう、と思った理由は、特に無い。単に、この楽しい人とお昼を過ごすのも一興かなと、そんな魔が差したのみである。そしてそんな魔の通り、確かに彼との会話は楽しいものであった。
     時たまお弁当の中身をチマチマ貰い、逆にパンの一欠片を通貨として差し出したりしながらも、瑞希は司と雑談をした。その際、彼は口に物を含んでいるときに話そうとしない、行儀の良い人物であると知ったりもしつつ。ふと、会話は例の課題へ向かうのであった。
    「じゃあ先輩はまだ、誰と何やるかなんも決まってないわけだ」
    「そういうわけだ」
     うむ……と妙に深く頷いた彼は、瑞希と同じくこの自由課題に頭を悩ませていた。自由というものは、よくとても素晴らしいものであるかのように扱われ、確かにそれも間違いではないことであろうが。やはり時折、寧ろ縛られた方が楽なような、好きに何をやってもよいと言われると逆に悩んでしまうような、そういう、自由に捕らわれてしまうことも、有り得るのであった。
     さて縛られることを好まない自由人である瑞希もまた、この手の形の自由にはほとほと困っており。「さてどうしようか」と悩む先輩へ、ならば、と、前々から少し考えていたことを冗談混じりに提案してみた。
    「ネェ先輩。ボクもまだなんも決まってないからさぁ。よければ一緒に何かやんない? 因みにボクは動画制作とか、お裁縫とか得意だよ。どうかなー? 先輩と一緒ならなんか、凄いのできそうだな〜ッて思うんだけど!」
    「おおそうか? 確かにスターの手も借りたいとはよく類も……、……うん? お裁縫?」
     なんだそれ猫じゃあるまいしと猫みたいにあざとカワイイ瑞希がそう思っていると、何かに気を留めた司がグルンと瑞希へ顔を向けた。ちょっと吃驚してしまい跳ね上がった肩を、手入れのなされた両の手が掴む。
    「お前裁縫ができるのか!」
     あなたトロロっていうのね!と燥ぐ幼女じみた、なんらかの心踊る発見をした人間らしい目の輝きに圧倒されつつ、瑞希は頷く。
    「エ、ウン。服のアレンジとか……あ、一から作ることも、あるけど」
    「なんと! オレもだ!!」
    「エッ。えっ?!」
    「よし暁山、それで行こう!!!!」
    「えっ?!?!」
    「衣装に関する何か……デザインの研究だとかでもいいし、この際衣装自体を作るでもおそらくイケるであろう! 暁山、オレと協力して課題を倒してくれ!!」
     賢者を仲間に求む勇者みたいな、きび団子を投げ付けてくる桃太郎みたいな勢いでそう頼みこまれ。
     瑞希は「あ、ウン。いいよー。……楽しそうだし!」と、最後には戸惑いを明るさで消して頷いたのだった。
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    はぱまる

    MAIKING書き掛けで放置してあった互いに成り代わる🌟❄️です。滅茶苦茶中途半端なとこで終わる。
    その内完成させたいとは思ってるんだけど、暫く手をつけられそうにないから今の状態を投稿してみます。
    完成させるなら今書いてある部分にも修正を加える予定。書いたの結構前なのもあって本当変えたい部分が沢山ある……。けど、まあ、これを読んでもし「ここ好き!」ってなったところがあったら教えていただけると嬉しいです🥳
    死に代わり 雨が降っていた。
     雲が重く空にのしかかり、空気さえも暗い都内は雨音ばかりで何処か静かにも思えた。
     雨が降っていた。
     傘も刺さず、少女は歩道橋から道路を見下ろしていた。
     雨が降っていた。
     道路には幾つもの車が水溜りを蹴飛ばしながら走っていた。
     雨が降っていた。
     少年が傘を握り締め歩いていた。
     雨が降っていた。
     少女が手摺りによじ登った。
     雨が降っていた。
     少年が少女に気がついた。
     雨が降っていた。
     少女は手摺りの向こう側で、ゆらゆらとしていた。
     雨が降っていた。
     少年は傘を投げ捨て走っていた。
     雨が降っていた。
     少女の体が揺れ、揺れ、ガクンとバランスを崩した。
     雨が降っていた。
     少年が少女を追った。
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