華を手折る 没落華族。少女が生まれ落ちた時には既に何も無かった。しかし、過去に囚われたままの両親は贅を尽くした。そして、負債を積み重ねていく。
一家の一人娘は見目麗しい少女。母親は少女を更に磨き上げた。見た目だけでなく、内面も。茶道、華道、日本舞踊……。父親もその為の財を惜しまなかった。
『全てはお前の為』
礼儀作法について、厳し過ぎる部分もあった。父親に顔を殴られた時には、母親がすぐに止めに入った。
「傷でも残ったら大変でしょう!」
一度きりだった。厳しくするのも自身への思いやり。そう思っていた。
少女の暮らしはとても裕福だった。しかし、それは作られたものだった。物心がつくと、多少の違和感を覚えるようになる。周囲の目。自宅に出入りする野蛮な男達。疑問を両親にぶつけた事がある。
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