ルベウスを捧ぐ「くそっ!!まただ!!」
黄色くくすんだ壁、昼にほど近い時間でも光の一切差し込まない部屋に、心ばかりの照明がオレンジ色の影を落とす。
地下特有のひやりとした空気と遮蔽感。これはこの場に集まった者達が質の良くない者達だと知らずとも勝手に想像するだろう。
けぶる空気を震わせる怒声と机を叩く音。
机の上、叩き付けられた拳の下で書類の束がくしゃりと悲鳴を上げる。
先程の男が苛立たしげにその焦げ茶の髪を搔きむしるが、周囲の者は疲れ切ったように項垂れたまま顔を上げない。
散乱した紙きれ、怒りの犠牲になった書類の上で細かな文字が躍る。
複雑な暗号の下、ようやく解読したそれは家庭料理のレシピであった。
これで煮え湯を飲まされるのは何度目だろう。
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