我欲 我ながら欲深い方だなぁ、と思う。だっていけない事だと頭では分かっていながらも“兄弟”のその先を求めたのだから。
「……なぁ兄ちゃん」
「触んな、昨日もしただろ」
今日の夕飯当番だった凛が片付けまで済ませ、ソファでスポーツ雑誌を読む兄の隣に座って声をかければこの反応。伸ばした腕はパシンと弾かれ、行く宛てもなく宙を彷徨う。
「………おい」
「くっついてるだけならいいだろ」
そんな兄の態度もお構い無しに手を腰に回し、距離を詰めた。咎める声が飛んでくるが、早々に諦めた兄は一つため息をつくと再び視線を手元に移す。ページを捲る指先をじっと見つめる凛に何を勘違いしたのか、兄はそんなに読みたきゃ一人で読め、と雑誌を軽く丸めて筒状にすると凛の頭を叩いた。全く痛みはないが、一応痛いと言っておく。
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