Honey Honey まるで黒光りする柔らかな宝石だ。
グラスに触れれば、振動でふるふると揺れ動く。ゆっくりとスプーンを差し入れると、大和はそのご褒美へ口をつけた。
「どう? オレ手作りのコーヒーゼリーの味は」
「…んめぇー…」
頬杖をつきながら訊ねて来る三月を前にヤギの鳴き声のような返事をすれば、クスクスと笑われた。その何気ない仕草にきゅんとしつつ、二口、三口、とスプーンを運ぶ。
喉越しのいいゼリーはひんやりとしていて、汗ばんでいた体を心地よく流れ落ちて行く。学生の口にも合うようにと微糖のコーヒーが使用されており、ゼリー自体がほのかに甘い。コーヒーフレッシュをかければさらに味がまろやかになって、ますます手が止まりそうになかった。
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