825【825】
「フェンリっち! 誕生日おめでとー!」
「デス!」
「……何処から聞きつけて来た」
キラキラとした瞳の少女二人と苦い顔の狼男。此処は魔界の果て、地獄。しかしその様相は常とは少し違っていた。拠点はささやかながら飾り付けられ、掲示板には「Happy birthday フェンリっち」の文字。クラッカーが鳴り、中央テーブルには毒々しいホールケーキとティーカップ、数え切れぬほどの蝋燭が準備されている。
「人間は昔からこの手のものが好きだな。まさか現代ではキンダーフェストが成人にまで広がっているのか?」
「キンダーフェスト?」
「2000歳を超えた大人が、それも"悪魔"の俺が祝福されるなど、片腹痛い」
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