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    naruga_tika

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    ガラハイ、理性と戦うガラさんは偉い

    #ガラハイ

    愛は嫌悪と等しく、血よりも濃い血の雨が降る。そんな極東の国が宣った慣用句を思い出した。別に、空は雲一つないし、月だって満ちていない。それなのに、仰向けに寝そべる私の頭上にはポツポツと垂れる雫があったのだ。
    「ガラ、何故そんなことをする」
    声を掛ければ、私に翳を落とす人物が苦しそうに呻きながら、軽く噛み千切ったであろう口許を開いた。
    「分からない、満月の夜でもないのに。込み上げてくる欲求が抑えられなくて」
    「どうしようもないから、自傷をして正気でいようと?」
    「……そんなところだ」
    すまないハイド、と続けるガラはまだ流血を続けていた。私が怪我したら擦り傷のような些細なものでも過剰に心配してくるというのに、本人は自分に頓着がないと来たものだ。そんな、ガラの中での優先順位が気に食わなかった。だが、特段私が指摘しなくとも長命の者同士だから分かるのだ。ガラが自分を愛せるときは、ガラが他人を愛せる時なのだと。
    「私は、都合のいい男で居るつもりはない」
    ガラが己を満たすためだけの道具で居たい訳じゃない。私はガラと共に並んで歩きたいのだ。それぞれの思想を、思惑を、因縁を。それら全てを乗り越えて、個として共に居たいだけなのに。それなのに、ガラの綺麗な眼球の奥に映る私は血塗れで悲しそうだった。
    「別にハイドを都合の良いように扱っているつもりはなかった、そう思わせてしまったのなら悪かった」
    「何故、そう言われたかは理解できるか」
    「心当たりが多過ぎる」
    「そういうところだ」
    本当は答えなんて最初から明らかだった。昔、ガラがエロビデオの中の話だけだと言った一幕に、人狼のサディズムとマゾヒズムを併せ持った場面があったのだ。その欲求は限りなく、本能に近く、そして性欲に等しかった。なあ、ガラ、私のことを好きになったから苦しんでいるのだろう。私は、お前を苦しませたくない。だが、お前から逃げるような真似もしたくない。手を伸ばし、流血している箇所を指の腹で押せば、最初は刺激による痛みで目を瞑るが意図に気が付いたのか、ばつの悪そうな表情で此方を見下ろしてくる。生き血を飲まない、と自分にポリシーとして課しているのが仇になったなと内心、舌打ちをした。ガラの血からは甘美な香りがする。この世で私が最も好きな香りが。ただ、この瞬間に私が顔に降り注ぐ血を享受すれば、それはいずれ、巡り巡って自己嫌悪へと繋がるだろう。
    「お前は私を愛しているか」
    確認のような、何でもない言葉だった。当たり前に限りなく近いその因縁は何よりも濃い二人だけの気持ち。古くから伝わる因習のようなモノなのかもしれない。友愛は恋愛へ、恋愛は親愛へ変わる。もう我々に恋をする時間はないのかもしれない。それ以上に私たちは求めすぎてしまったからだ。お互いに、お互いを欲して。そして水よりも血液よりも濃い、それを己の中にお互いに自覚して、愛という名前にしたくなくて、足掻いた。愛だと気が付いてしまったのなら、その先に待つのは自己嫌悪しかないからだ。
    「ああ、愛しているよハイド」
    友である時間が永過ぎた、恋に気が付くのが遅すぎた、お互いのテリトリーに居る時間が心地良過ぎたのだ。
    「ガラ」
    「なんだ?」
    「永遠ってあると思うか」
    手を離し、そのまま指を滑らせ、ガラの顔の輪郭をなぞる。質問を投げかけられた本人はというと目をぱちくりと何度か瞬かせた後に、小さく笑って「ないな」と言った。
    「私もそう思う」
    だからこそ、この一瞬がとても愛おしいのだと。そういうには、まだ正気過ぎたのだ。せめてこれをかき消す雨が降っていてくれればと、いつものシアトルと違う今日へ悪態をつきながら、触れた温度に酔い痴れていた。



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