ヒプマイ 寂雷×乱数(案⑧)『乱数ちゃん』 寂雷の元にメールが一件。
『じゃーくらーいー。悪いんだけど事務所に来てくれるぅ? きんきゅー』
なんですかこれは、と思いつつ寂雷は車を飛ばし乱数の事務所へ。コンコンコンッと丁寧に三回ノックすると「どーぞー」といつもと変わらないが声が幼い。「失礼します」と室内に入ると寂雷は目を丸くする。
目の前にいるのは乱数だが大人ではなく子供の姿になっていた。服はブカブカでだらしなくズボンの裾は床に引き摺るように広がっている。袖も同じ。
「これ、どう思う?」
「何があったんですか?」
「違法マイクの効果でなんか子供になっちゃって。時間が経てば戻ると思うんだけど。物事こなすのも大変でさ……」
「それで、私を呼んだと?」
「うん!! お世話してよ」
ニカッと可愛い笑顔に心を撃ち抜かれる寂雷。とりあえずソファーに座っている乱数を持ち上げ、腰を下ろしては膝に乗せる。
「おぉーたかーい」
「そうですか?」
「うん。お腹空いたなー」
「何か作ってきますよ。何が良いですか?」
「んー」
「では、適当に」
キッチンに向かい、冷蔵庫を開けると中にあるのは卵とネギ。あまりの不健康な食事に「やれやれ」と呆れつつ作ったのは卵スープ。
「食材がなかったので温かいスープを作りました。卵とネギと塩コショウで味付けしたシンプルなものです。お口に合いますかね?」
両手を上げ、待ってました、と言わん顔の乱数に溢さぬように渡すとフゥフゥしながら一口すする。「アチチッ」と熱がりながらも卵の優しい味と塩コショウが良いバランスで利いているのか「美味しい!!」と笑顔で飲む。
「良かったです。おかわりありますからね」
赤ん坊のようにクビクビ飲み。プハァッと飲み干した顔がなんとも可愛く寂雷は微笑み返す。
「おかわりぃ!!」
「分かりました。待っててくださいね」
子供のように世話をし、お腹いっぱいになった乱数はいつの間にかソファーでスヤスヤ寝息を発て寝る。そんな可愛い寝顔を乱数には内緒で寂雷はこっそり写真を取り、スマホの待ち受けとなった。