ヒプマイ 寂雷×乱数(案⑨)『バレンタインデー』 二月十四日、バレンタインデー。
「寂雷、みてみて。オネーさんからチョコたっくさん貰っちゃったぁ!! えへへっ」
仕事終わり、寂雷は乱数の事務所へ。乱数は「じゃじゃーん」とテーブルにはたくさんのラッピングされたチョコレートを見せつける。
「乱数くんスゴいですね。何個貰ったんですか?」
「いち、にー、さんー、しー……ん、わかんない」
「ざっと見て三十近くか。それ以上か」
「わーい、ボク嬉しい!!」
嬉しさに跳び跳ねる乱数。
「あれ、寂雷は貰ってないの?」
「貰いましたよ。ほら」
寂雷の手には個包装されたチョコが入った紙袋。
「甘いものは得意ではないのでキミにあげますよ」
「えっ、いいの? でも、こんなに食べられるかなぁ?」
悩む乱数の顔に寂雷は「なら、一緒に食べますか?」とソファーに腰かける。「じゃあ、何を貰ったか見せあいっこしながら食べよ!!」と乱数は嬉しそうに隣に座った。
手作りクッキー、手作りチョコレート、コンビニのチョコ菓子に有名ブランドのチョコレート。乱数のチョコは動物やリボンなど可愛い形をしたモノが多く、寂雷のはビター系の苦めなものが多かった。
「はむっもぐもぐ。甘くておいしー」
「ほろ苦いビターがクセになります」
自分のチョコと互いのチョコを食べながらゆっくりした時間を過ごしていると寂雷が「おや、なんですかね?」とお酒のパッケージの包み紙のチョコを見つける。「あ、寂雷。それは――」と止めようとするも時すでに遅かった。
お酒入りのチョコを食べた寂雷。カリット砕けばジュワっと中に入ったお酒が口の中に広がる。体が熱くなる感覚に「これは――」と言いつつクセになるのか手が止まらない。
「すとっぷ。すとっぷ!! 寂雷、それお酒!!」
手が止まらない寂雷の手を乱数が掴むと「ヒック」としゃっくりに「げっ!!」と手を離す。
――ヤバい、水――と乱数は席を立つも腕を強く引かれ、ソファーに押し倒されるや「ズルい」と寂雷の酔っぱらいつつも嫉妬の声が耳に入る。
「え?」
「私にはくれないのですか? 外国ではバレンタインデーは男女関係なくあげるものです。むしろホワイとでというものは存在しない。ですから、キミからは私にチョコはないんですかね?…無いのでしたら――頂いてもいいですか?」
近づく顔。
柔らかく大人びた唇が乱数の唇に重なる。
その瞬間、乱数の顔が真っ赤に。
「んっあっ……まって、寂――」
体が熱い、押し返そうにも力は届かず。
熱を帯びたからだが重なり合う。
「好きです、乱数くん。私のプレゼント受け取ってください」
口に広がるチョコの味。
そのキスはチョコよりも何倍も甘かった。