連れ出さないで、王子様 タミヤちゃんが男の人と談笑してる。
相手の男の子は、背が高くかっこよくて、美人なタミヤちゃんと並ぶと絵にかいたような美男美女のアベックだ……
私は幼馴染で、同性の彼女にずっと恋をしている。
だけど目の前にいるのは、タミヤちゃんにふさわしい王子様。
それに比べて自分は背はタミヤちゃんより低く、美しくない。これと言った取り柄もない。
そして彼女と同じ女。何一つとして繋ぎ止めれるものがない。
これから先タミヤちゃんには、ステキな人からのアプローチや出会いはたくさんあるだろう。
友としてのつながりのみでしかつながっていない自分はいつか彼女との間に距離ができてしまうのではないだろうか……
せめていい友人で、もしもタミヤちゃんが結婚して、子供が産まれてそのタミヤちゃん似た赤ちゃんを抱っこするそれぐらいのたのしみはあるかもしれない。
複雑ではあるけど……
でも、嫌だ
王子様なんて来ないで、タミヤちゃんとダフしかいない世界で入れたらわたしはいいのにな…
私から幸せな空間を……彼女を取り上げないで。
タミヤちゃんが私の王子様だったらよかったのに…
無理に決まってるけど……
心にドス黒いヘドロのような恋心がこびりつき離れない。
不安が募っていく、自分がせめて男だったら綺麗でなくても彼女を独占できる。
見た目だけでも… …
ふとそんなことを考えてしまい、筆箱に入れていたハサミで長かった髪を切ってしまった……
案の定、親には何で「こんなことしたの?」と怒られ、おばあちゃんには心配され、不揃い部分を整えてくれた。
次の日の朝タミヤちゃんとダフも驚いてた。
タミヤちゃんとダフは不思議がっていたが、理由は適当に濁しておいた。
こんなこと2人が知ったら、引いちゃうかもしれないし。
それから3日経って、ようやくこの髪型にも少し慣れてきた頃、タミヤちゃんに呼び止められて赤色のヘアゴムを渡された。
「わたしは、今くくれないよ」
渡されたゴムを見ながら、タミヤちゃんにそう返した。
前なら二つ返事でもらったが、今はそんな気分になれないし、断る理由もある。
「これさ、あたしもお揃いでかったんだ。カネダにも似合うと思うし、一緒につけたいと思って!あたし、カネダの長い髪好きだったから、髪のばしてこのヘアゴムつけて欲しいな!」
タミヤちゃんずるいよね。
そんなこと言われたら断れる人なんていないのに。
でも、どこかで喜んでいる自分がいる。
嬉しさと諦めさせてくれない憎らしさが混ざりながら、渡された赤いゴムをわたしは受け取った。
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「カネダさんってお付き合いされてる方いますか?
ずっと気になってて、勇気が出なくて…
どんなことが好きなのか教えてほしいです。
タミヤさん」
照れくさそうに、少年はいった。
タミヤの目の前には今、自分より背が高く、クラスの女子がかっこいいと噂をしていた隣の男子高の少年が立っていた。
通学路で見てから、一目惚れしてずっとお話ししてみたいと思っていたそうだ。だが、話しかけたいがどう話していいのか分からず友人の君に紹介してもらいたいのだとか。
帽子の鍔を何度も触り、タミヤの返事を伺っている。
きっとこれを知ったら、カネダは顔真っ赤にし照れて反応に困ってそうだな…
でも、自分のことそんなふうに思ってくれる人がいるなんてとか喜びそうだ。容易にそんなカネダが思い浮かぶ。たしかに、カネダに惚れるのなんて見る目がある。
「そっか〜、カネダは美人だし、料理上手だしいいところいっぱいあるからお前が好きになる気持ちもわかるよ。
でも、残念だな。カネダ恋人いるんだ…
ずっと付き合ってて長いから、その人以外は興味ないんだってさ。
最近もその恋人からヘアゴムもらったからまた髪伸ばすんだって喜んでたから、脈ないとおもうわ。
残念だけど、お前いいやつそうだし、気持ち切り替えて新しい恋探せよ」
たった今失恋したことを知った少年の目の前には少女の艶やかで美しい笑顔だった。
粉々になったガラスの靴