食前の美カネダは必ず、ご飯を口に運ぶ時、飲み物を飲む時、前髪を避ける。小さい頃から見ている光景のはずなのに、最近その仕草に見入ってしまう。
髪を抑える手、指の仕草。
少しだけ開く口。
口を拭く動作
その一つ一つに動作に艶っぽさを感じ、自分の中で感情が湧いてくる。
「タミヤくん?どうしたの?」
同じく一緒にご飯を食べているダフが不思議そうに聞いてきた。その声に反応して、カネダも俺の方を見ている。
「…お腹空いてないの?」
カネダの動作に目を奪われ持っていた箸はご飯をつかもうとしたまま止まってしまっていた。
そんな俺を見て2人は心配そうにこちらを見ている。
「大丈夫!ちょっとぼーっとしちまっただけだ!悪いな」
「そう、ならいいけど無理しないでね」
俺がそう返すとまだ少し心配はしているみたいだが、2人ともご飯を食べ始めた。
「…なんだろ?この気持ち…」
次の日、前から見ているから自然と見てしまうのかと思いあえてカネダの横に座った。
いつも、俺が座ってからダフとカネダがなんとなくで座ているせいか、俺がカネダの様子を見て座ったのが珍しいそうにしていた。
隣からであれば大丈夫だろうと思っていたが、その考えは意味がなかったらしい。
カネダの箸を持つ手。
隠れている右側がチラッと見える角度。
そして件の食べる時に髪をよける仕草。
それを隣からチラチラ見える分昨日よりも謎の胸が高鳴っていく。
「タミヤくん大丈夫?!」
カネダが慌てた様子でこちらを見ている。前にいるダフもびっくりした様子でこちらをみている。
「顔がすごく赤いよ!もしかして、熱でもあるの?」
ダフにそう言われ、2人が自分を心配している理由がわかった。確かに顔が熱い。でも体調が悪いわけではない…
「わるい。俺ちょっとトイレ行ってくるわ。待ってなくていいから」
そういって、心配している幼馴染たちをよそに俺はトイレへと向かった。
いまだに顔の火照りは取れず、あの食事の時のことがまだ頭から離れない。
向かう途中、聞き慣れた声が聞こえた。
雷蔵とヤコブの声だ。
「もう!ヤコブってばわかってないわね!
好きな人ができたらその人の一つ一つにときめいてしまうし見惚れてしまうものなの!
それが恋ってもんでしょ!」
向かう途中に聞こえた雷蔵の言葉が俺にはしっくりきた。
俺は金田りくに恋した。
この時初めてわからない感情の意味を知った。