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    臓物(GwT)

    @motsu_nikomiSUB

    節操無し置き場。K暁のみ。
    今後こちらには健全なもののみアップしていきます。
    (過去アップした年齢制限付きのものは置いたままにしていますが、メインの更新先はぷらいべったーです)
    書きたいものを書きたい時に。
    かなり拙いので、
    あまり深く考えずにお読みください…。

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    臓物(GwT)

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    毎月25日はK暁デー
    お題『trick or treat』で書かせて頂きました!

    #K暁
    #毎月25日はK暁デー

    イタズラは後払いでお願いします。 布団を被り、熱で潤む目でぼんやりと天井を眺めながら、暁人はひとり思う。
     ──渋谷のハロウィーンを舐めていた。
     兎にも角にも、この一言に尽きる。

     ◇ ◇ ◇

     盆・彼岸・ハロウィーンの時期は、彼の世と此の世を繋ぐ道が開き、帰って来る死者に混じって厄介な魔や怪が人間を狙いにやって来る。

    『我々にとっては稼ぎ時になる。つまり繁忙期、休む間もないという事になるけれど、今年は暁人と麻里が加わったことだし、ボクらも多少楽になると信じたいね』

     そもそもはヨーロッパを発祥とする秋の収穫祭で云々──と、長々しいうんちくと共にボイスレコーダー越しにエドから期待の言葉を貰った暁人は、それに応えるべく張り切っていた。
     凛子やデイル、歳下ではあるが仕事上の先輩に当たる絵梨佳と、(兄として心配は捨てきれないけれど)適合者として自分より力があるという妹の麻里、そして心強い相棒のKKと共に、いざ夜の渋谷へと勇んでみたはいいが。

    「こんな重い衣装を着るなんて聞いてない!」
    「あぁ、言ってないからな」

     やたらにモチモチしたティラノサウルスの着ぐるみを着て吠える暁人の隣には、同じくコスチュームを着たKKがスンとした顔で立っていた。人混みに流されないよう尻尾を掴んでくれていて、自身も街灯に掴まっている彼はシーツを被ったお化けの恰好をしている。
     舌をぺろりと出した可愛らしい刺繍の下で目を忙しなく動かして、様々な姿に化けた人だかりの中から本物の異形を探している。

    「デイルは軽々着こなしてたぞ」
    「弓矢も持ってるから、結構いっぱいいっぱいなんだけど……。新しく調達は出来なかったの?」
    「仕事なんだから、着飾る必要はないだろ」

     女性陣はかなり可愛らしい、装飾の凝った魔女にチェシャ猫、アリスの衣装だったのに?と言いかけて、アジトを出る際に嬉しそうに飛び跳ねていた麻里の笑顔を思えば、仕方がないかと思い直す。

    「オマエは上から、道を外れて裏に回るヤツらに気を配れ。暗い場所こそアイツらの縄張りだ、必然的に狙われやすくなる」
    「わかった」

     そこからは、トリックオアトリートどころではない怒涛の大浄化イベントの始まりであった。

     血塗れのナース服の女性二人の背にピタリと憑いていた影法師を即浄したKKが、殺気にハッと横を向くと、人の流れに押されるがまま脇道に逸れた人気キャラクターのコスプレをした若者達を狙って、鉈女が得物を振りかざしていた。風のエーテルを放って手に持った鉈を弾き飛ばし、人に姿を見られぬよう暗がりに入って、上空を飛んでいた天狗にワイヤーを伸ばす。飛びながら下に向けて打ち出した水の刃が鉈女の首に直撃して、顔の無い頭と分かたれた体が共に霧散して闇の中へ消えた。
     その間ビルの上からの偵察に回っていた暁人が、一反木綿を掴みキャッキャとはしゃぐ喜奇童子の群れに麻痺札をお見舞いして一体一体確実に祓った後、不気味な笑い声を上げながら浮遊する虚牢を誤たず矢で射抜いた。
     一息ついてインカムでKKに呼び掛けようとして、背後から奇妙な水音がして咄嗟に距離を取ると、先程まで暁人が立っていた位置にダンボールや三角コーンが飛んできてぶつかった。当たらなかったのが悔しいのか、癇癪を起こしたように重い足音がドシンドシンと響いて、背中を嫌な汗が伝う。

    (不見鏡──!)

    「KK!まずい、不見鏡が出た!」
    『マジかよ……、どんだけ大漁なんだ』
    「今どこ?」
    『ついさっき、エドからオマエが居る場所の座標を聞いた。すぐ行くから、それまで逃げ続けろ。いいか、絶対に下には行かせるなよ!』
    「無茶を言うなよ、な……!」

     エーテルを行使する力がすっかり弱くなってしまった自分では、不見鏡の相手をするのは不安がある。かろうじて霊視が出来るのは幸いだったが、相変わらず隠れてばかりで掴みどころがなく、暁人が苦手とするマレビトだ。
     ぺたぺたと追い掛けてくる青い足跡から逃げて走り回る。時折媒鳥札を付けた矢を放って気を引いて、「こっちに来い」「そんなんじゃ全然当たらないぞ」と声を出して煽り、また走る。
     やはりこの着ぐるみで普段通りに動くのは無理がある。息を切らして矢筒に手をかけ、残り少ない矢を掴んで跳び上がろうとした──その時。

     フフ、ウフフ……。

    「いっ……て!クソ、離せ!」

     何者かに足を掴まれて、視界がガクンと揺れた。跳躍も叶わず顔から倒れ伏す。嗤う声に視線を向けた先、不見鏡から垂れ落ちたもので出来たらしい水溜まりから、黒土女が顔を出して暁人の右足首を掴んでいた。
     引きずり込もうとする腕から逃れようと足を動かし蹴飛ばしても、相手は化け物。力が強いし、それしきの事では怯まない。これは万事休すか、と覚悟をした暁人に、頭上から声がかかった。

    「伏せろ!!」

     言われた通り、抵抗を止めて両手で頭を守り伏せた瞬間、灼熱の槍が爆ぜて黒土女を吹き飛ばした。暁人も衝撃を受けて転がったものの、屋上の縁から落ちかけた体を金色のワイヤーが間一髪で絡め取り、強い力で引き上げられる。

    「無事か?」
    「無事に見える?」
    「元気そうに見えるぜ。また一段と男前になったな」
    「ふ、まぁね」

     助けに来た相棒の顔を見てホッとする。正直無事でも元気でもないけれど、普段通りに軽口を交わし合って、幾らか気分が落ち着いた。鼻血を腕で拭い、今一度KKの隣に立つ。

    「よぉ、よくもウチの大事な若手を痛め付けてくれたな。とびきりキツい仕置きをしてやるよ。暁人、後方支援は任せたぞ」
    「任せて。僕としても、仕返しをしなきゃ気が済まない」

     翠・蒼・紅に煌めくエーテルの隙間を抜けて白羽が飛び、ぶよぶよした実体の無い相手に矢が突き刺さる。
     痛む体に鞭打って、自分を散々な目に遭わせた相手を追い詰めるべく、暁人は奮闘した。投げられたバケツが顎にクリーンヒットして、昏倒するまでは。

     ◇ ◇

     そして日付けを越して十一月一日に至る。昨夜の騒ぎがまるで夢幻かのように、街は静かで、遠くで音響信号がピヨピヨ鳴いて、忙しなく道を歩く人の足音がする。
     アジトの仮眠室で目を覚ました暁人は、包帯が巻かれた腕や、額に貼られた熱冷ましのシートを触って、あれは間違いなく現実だったのだと実感した。

    「っくし!」
    「あらまぁ、可愛らしいくしゃみですこと」
    「う、うるさいなぇえっくしゅん!」

     茶化すKKに言い返そうとするそばから、くしゃみが止まらない。バケツに入っていた水のせいか、体を酷使した影響か、あるいはその両方か。三十八度五分の熱を出してしまい、夜も遅いというのに妹やゴーストワイヤーのメンバーが代わる代わる看病をしてくれた。明け方に一時解散となり、今は彼が診てくれているという訳だ。

    「麻里がオマエにって、粥を作って置いていった。食えそうか」
    「わぁ、助かる!お腹減っちゃって」

     KKが持ってきた盆の上、一人用の小さな土鍋から、ほこほこと立ち上る湯気と共においしそうな匂いがする。木匙で掬って口元に差し出されたものを、ぱくりと口に含んで軽く咀嚼してから飲み込む。

    「悪かった。もう少し早く助けに行けたら、そんな怪我しなくて済んだろうに。風邪までひかせちまって」
    「謝らなくてもいいのに。あんたはちゃんと助けに来てくれたんだから。それよりさ、昨日は僕なりにかなり頑張ったつもりだけど、どうだった?」
    「そりゃ、褒めろってことかよ」

     暁人は口で返事をせずに、じっとKKの顔を見た。そうして互いに見詰め合った末に根負けしたのは彼の方で、肩をすくめて見せてから右手に握っていた匙を置いて、わしわしと掻き混ぜるようにして頭を撫でられる。

    「よくやった、よくやった。今回は二重丸。点数は、そうだな……八十点ってとこかね」
    「わ、っと、グラグラする!もう、雑だなぁ」

     それでもやはり、彼から褒められることは自分にとって最大の褒美になる。これが怪我の功名というやつか。
     至福の時間に浸っていたかったのに、KKは「あ、そうだ」と、何かを思い出したらしい声を上げて、撫でる手をピタリと止めてしまった。ポケットを漁って取り出されたのは、小さな飴のようなもの。

    「ウイスキーボンボン。食えるか?」
    「食べるけど……、何?」
    「何?ってオマエ、トリックオアトリートってやつだよ」
    「もう過ぎたよ」
    「オレん中ではまだ三十一日だ」
    「何だよ、それ」

     両手をワキワキと動かすのを見て苦笑する。
    「生憎、今はこの通り体調を崩してるし、お菓子も持ってないんだよね。だから甘んじて悪戯を受けるよ。治ってから、でいいなら」

    「おっ、乗ってくれるとは思わなかったぜ。楽しみだねぇ。じゃあその時まで、オレ達のハロウィーンは続くってワケだ」

     そんな都合のいい話があるかと言いたいところだけれど、心配をかけてしまったお詫びとして、少しぐらいなら彼を甘えさせてもいいだろう。

    「今日のところは、これで勘弁しといてやるよ」
    「え、何……っ!?」

     掻き上げられた前髪。KKの顔が近付く。額に触れた髭のチクチクした感触と、リップ音。手に持っていたボンボンがぽろりと落ちた。風邪の熱とはまた違う熱さを持った額と頬を押さえて見上げると、悪戯好きなお化けが、満足気にニシシと笑っていた。

    「ご馳走さん」
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