「お前さん、デザートは別腹?」
「はい!もちろん。」
「うん、いい返事だ。ちゅうことで、デザートにぴったりな酒をば。」
これまで散々甘いのばかり飲んでいて何を言うのかと言う気もするが、それは良いとして。
買い込んだ他の瓶とは別で保管していたものを持ってきた。
「コティって知ってるだろ」
「有名なチョコレートブランドの……で合ってます?」
「正解。そこが出してるチョコレートの酒。」
ダイニングテーブルに酒瓶を置く。深い茶色のボトルにはよく見るブランドロゴが輝いている。
ルークの目が釘付けだ。
「絶対おいしいの間違いないじゃないですか!」
「だろ。だが今日はそれだけじゃ終わらない。」
冷凍庫からバニラアイスクリームを取り出す。
ミニカップでも他のより高いブランドのそれをパイントサイズで用意した。
「アイスクリームにチョコレートのお酒……、まさか?!」
「ルークの思った通り。こいつに酒をぶっかけて食べる。」
「モクマさん、なんて恐ろしいことをしようと言うんですか…。」
ごくりとのどが鳴った。
「だって、今日はこの辺りじゃ好きな人とチョコレートを食べる日なんでしょ。」
「……今日? あ、今日14日でしたね。…僕も何か用意すれば良かった…。」
「チョコより甘いものもらったから充分すぎるよ。」
「……っ、その件は、今は。」
「そうだね、アイスが溶けちまう。」
真っ赤な顔をしたルークに笑いかけて、指定された皿を出す。
流石ルークの家と言うか、アイスクリームディッシャーがあったもんで、皿に乗ったアイスクリームは綺麗な丸い形になった。
ルーク用にひとまず3玉、自分用に1玉をそれぞれ盛って、チョコレートリキュールを回しかけた。
それぞれの皿とスプーンを置いて座る。
昨日の夜とは違い、2つの椅子がくっついているのはこそばゆいもんだ。
「…これは…」
一口目を口にして、ふわ、と表情が緩んだ。
「そのままでも特別美味しいバニラアイスクリームにチョコレートがベストマッチですね。このチョコレートのお酒も普通のチョコレートソースより上品な甘さでコクがあって、これは…あまりにもうまーい!」
「ほんと、ルークはうまそうに食うよね。見てると幸せになるよ」
「モクマさんと一緒に食べてるから更においしいんですよね」
「可愛いこと言ってくれちゃって。」
「本心ですから。毎日一緒に食べられたら幸せだろうなって思います。」
「そうだねぇ。……お互い、今はそうも言ってられないけどさ。そんな日が来たらいいなと思うよ。本当に。」
溶けたアイスと同じくらい甘い夢でも、根拠はなくても。ルークとなら叶う気がするから不思議なもんだ。