同棲軸茨あちゃんの計画別居の話、供養「出て行くよ、わたし」
長期旅行用の大きなキャリーケースを抱えた恋人が、帰宅したばかりの俺に向かって高らかにそう宣言した。
「……行く宛てはあるんです? ご実家?」
「いや、ホテルとったよ」
「そうですか。じゃあ自分が出て行きますよ、ちょうどそうしようと思っていましたし」
あんずさんがやや眉をひそめて思案する。大きなキャリーケースにリュックサック、PC、仕事用のトートバッグ。俺ならその半分、いや三分の一で十分だ。
「でもホテル予約したのはわたしだし……」
「電話すれば名前くらい変えてもらえるでしょう。それほど混む時期でもありませんし。『ここ』の方がセキュリティーもしっかりしてますから、あんずさんはそのままこちらでどうぞ! さて、自分は今から荷物をまとめますから少々お待ちください!」
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