【主が酔い潰れた後編】主視点(…………?)
なんか、長谷部がごちゃごちゃ話してると思う。
私、小言中に居眠りしちゃったのかな。
仕方なく重い瞼を抉じ開けて、
「長谷部?」
「ッ!主……」
長谷部の顔はビックリしていたものの。いつもと違っていて、
(えー、なんか長谷部…)
お腹痛そうだね?ちょっと泣きそう。
「長谷部」
手を伸ばして指先で頬に触れ、軽くつねってみた。
これ、
(やってやりたかったんだよなー…)
むかつくこと言われるたびに。
長谷部は顔をしかめたり、避けたりせず、つねる私の手に長谷部自身の手を重ねてきた。
「……主」
「ん…?」
長谷部は泣きそうなまま微笑すると、
「もっと触れてください」
「いいよー」
もう片方の手も上げて長谷部の両頬をつねつねしてから、長谷部の頭を両手で撫でた。
桜が舞ったので嬉しいようだ。
「髪サラサラだね」
男のクセに。うらやま。
「あ、神だけに一?フフフフ」
自分で言った良く分からないことにウケて笑ってしまうと、長谷部が何故か息を飲む気配がした。
「主一一。俺、は」
「ん…?」
長谷部が黙ってしまって、うつ向いた。
なので、長谷部の顎を指先で持ち上げ、顔をあげた長谷部の表情を見たら、やっぱりお腹痛がってる感じに泣きそう。
「どっか痛いー?」
「……は、痛いかもしれません」
「どこ?」
長谷部が微かに笑い、
「心の臓が引き裂かれたようで」
心臓…?
「………」
長谷部のうなじに両手を掛け、そのまま引き寄せて、キスしてあげた。長谷部の全身が固まって、息も止まる。
「一一あるじ」
「いーよーしても」
「し、…ッ!?……本気に、してしまいますよ」
「いーよ。なんか気分い一し」
「ああ……随分酔っていらっしゃいますからね」
「そー…だね」
「主」
今度は長谷部から唇を重ねてきた。
やっぱするんじゃんと思っていたら、長谷部はただ重ねるだけの紳士的なキスだけで離れ、
「貴方の信頼は裏切りません……が、お許しください。お慕い申し上げております、逢った時から、今も。そしてこの先も永劫……」
一一えいごう?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(頭が頭痛で痛いよ……)
トイレ行きたいし起きなきゃだけど面倒。
そういえば、昨日。変な夢見ちゃったなあ。
イケメン揃いなのに他の刀ならともかく何で長谷部と?一番優しくないじゃん。
こっちきてから全然ヤってないし、欲求不満なのかも。男に囲まれててもヤらないのなんて慣れてるはずなのに。
(あ~…)
起きたくねえ…。
と、
「一一主、」
長谷部だヤバい。もう陽が高いのにゴロゴロしてて絶対お小言ゆわれる。
咄嗟に寝たフリで襖に背を向けた。
トイレ行くから起きるしかないんだけど…。
「お早うございます…と言っても、もう昼近いですが、主…。まだ寝ておられるので?」
襖が開く音がして、
「二日酔いで寝坊とは、……呆れた方だ」
長谷部が静かな溜め息を吐くのが聞こえる。
一一くそお。
夢の中では子犬みたいで可愛かったのにな。
(そういえば……)
長谷部が言ってた最後の、
『この先も英語を』
って何だったんだろうな?
……やっぱ夢だなぁ。意味が分かんないわ。
【了】