お花見ディルガイ進捗2「お邪魔します」
「ディルックのところの兎も連れてきたんだな!どうぞどうぞ」
先ほどからソワソワして青い毛玉が移動式ケージからのぞいているのだが、やっと開けてやれば、勢いよくお庭だ‼︎お外だ‼︎兎の旦那様だ‼︎あったかい‼︎と大はしゃぎの青い毛玉の兎が久々の外に大好きな赤い兎がいるとわかり、一目散にそちらそのほうへよって言って一緒にぴょんぴょんと跳ね回っているのを見て本当に春だと感じなから微笑ましく見守っていればこちらの兎は今日のために丹精込めて作ったお重をいそいそと用意しているのが目に入るのである。
「わざわざ用意してくれたのかい?」
「せっかくの花見だからな‼︎先日用意してもらったお酒が美味し過ぎたから」
縁側でゆっくりしようと2人のペットも顔合わせをすればすぐに2匹でいちゃつき始めるので庭の柵から出ないように注意しつつ、大人組はお酒とご飯だ!と言わんばかりにガイアはお重を持ち出した。
「ふふ、今日はお店じゃないから好きなもの詰めたぞ!」
「そうこないと」
とはいっても酒のつまみとお肉がどうしても多くなるのだから本当にディルックとガイアの好みだらけなお重である。季節の野菜に唐揚げや卵、ついでに兎達も食べられる味付けのない菜葉を詰めた漆のお重をいそいそと出して清酒で乾杯。兎達も匂いを嗅ぎつけたのか、菜葉を食べたらお互い追いかけっこをして春を満喫中である。
「ふふっ、毛玉と毛玉が遊んでるのは可愛いな」
「本当だね。君も今日はお店じゃないんだからゆっくりしていいんだよ」
「充分楽しまさせていただいてるぞ♡」
「お酒をガンガン飲んでいいわけじゃないんだが……」
ディルックから貰った日本酒をちみちみと美味しそうに飲んでご機嫌の女将と、飲みすぎるなよ……と呆れつつ声をかけるディルック。しかし、普段は客とは言え、ここまでされるのももてなされすぎだからという気持ちになるディルックは声をかければ、ガイアはやりたくてやっていると言う始末。
ぽかぽか暖かい陽気の中、戯れる兎達を見ながら談笑して飲むお酒は格別すぎて……
「ん〜…」
「ガイア、もう酔ったのかい?」
「すこしだから大丈夫」
今日はせっかく忙しいディルックと一緒にいるのだからとペースを落として飲むガイア。前後がおぼつかない様子でふらふらと隣のディルックの肩に寄りかかれば先にいちゃついていた兎達がイチャイチャしてるの?とばかりに寄ってくるので撫でてやる。ふわふわして可愛いと思っていたのだが、どうにも気のせいだけではないふわふわもある気がする。この時期には早いたんぽぽも舞ってるのかな?と思ったディルックは……
「もしかしてこの子達……換毛期なんじゃないか?」
「ブラッシングするか!」
トンビに狙われても嫌だから人間と遊ぼうなーとばかりに声をかけるとすぐに集まる兎のガイアと渋々寄ってくる兎のディルック。聞き分けがいいとガイアは喜ぶのだが、
「ふふ、本当に素直でいい子達だなぁ。ディルックの家の兎も」
「兎も生き物だから……」
懐きやすい人間がわかっているのでは?と思うと同時にここにいる生き物は皆雄のはずなのだが……と訝しがるディルックにお前が一番危ないとワイシャツの裾を噛もうとしている赤い兎においたは駄目だぞと取り上げる人間のガイアに構って!と足元を彷徨く青い兎と大所帯である。結局2匹とも人間のガイアがいいとばかりによじ登ってくる姿に抱き上げて撫でながら櫛を倒してやればうっとりと大人しくなる2匹である。
「ふふっ、すぐ溶けちゃうんだから可愛いな」
「兎ってこんなに溶けるんだな……」
人間のディルックにも慣れて来たのか、最近は2匹とも白いお腹を見せて畳で寛ぐのだから、この環境に慣れつつあるのだなと察する。主人達のデートに付き合わされているのだけどなんだか……
「兎達の方が距離が縮まっているような」
「?」
見ればブラッシングを終えて蕩けた兎達は互いの顔をまふまふにくぐり込ませて、ぎゅうぎゅうとくっつきながら仲良くくつろいでいる。ブラッシングで疲れたのもあるだろうが、互いに毛繕いをしたりぐいぐいと頬を合わせている様子は可愛らしく、もちもちふわふわとした固まりが縁側でくつろいでいるのを見ると本当に普段の殺伐としたオフィスで仕事を忙殺している日々とはかけ離れた日常にディルックは目尻を下げ、そんな様子をみたガイアは和むばかり。
「なんだかすっかり実家みたいな顔をして……」
「いいんだ。俺が顔を見たいって言ってたんだから。普段仕事場にいてもらってるし、今日くらいは好きにさせてあげたいし」