賽を投げる ホウライ由来の茶をティーカップに注ぎ、駅前のデパートで買い求めた茶請けの菓子をテーブルに並べているのは、世界代行者だった。
穏やかに笑みを浮かべながらティータイムの準備をする。カップは二人分、用意されており、丸いテーブルを挟んで椅子が二つあった。
誰かと茶会の約束でもしてるのか?
いいや、約束などしていない。ホウライ出身の世界代行者に、約束などなんの意味も持たない。
「入室のマナーを御存じないのは、百歩譲って結構であるとしましょう」
誰もいない部屋で、竜種の彼がぽつりとこぼした。
「ですが、ええ、ですが……」
かつかつと靴が床を叩くような足音が響いてくる。まっすぐ、崑崙に住まう竜種のもとへ進んでくる気配もした。
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