私を呼ぶ声波間をたゆたう意識が、ぎい、ぎい、と音を立てて引き戻されていく。
呼吸をひとつする度に、指先に感覚が宿る。
どこかで雨の音がする。そして、火の爆ぜる音。
ぎい、ぎい、ぎい……
気づけば、私はロッキングチェアーに揺られていた。傍らには暖炉があり、薪がバチバチと音を立てながら火を踊らせている。
夢うつつで聞いた音はこの音だったらしい。室内は薄暗く、暖炉の灯り以外、頼れるものは無かった。
視線の先には窓があるが、木が打ち付けてあって何の灯りも見えない。ただ、雨が窓を叩くその音だけが聞こえてくる。
まるで、この部屋全体が暗闇に飲まれているようだ。
「やっと起きたのか」
声のした方に視線を下げると、声の主は傍らにしゃがみこみ、赤い瞳でこちらを見上げていた。
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