面白くない。めちゃくちゃ面白くない。その理由は、小さなディスプレイの中にあった。
「珍しい。ひとり?」
「あ、千切」
蜂楽の後ろから声をかけてきたのはトレーを持った千切だった。ここ座っていい? と尋ねてきた千切にこくんと首を振る。
久しぶりに会う元チームメイトに声をかけられて嬉しくないわけではなかったが、それ以上に不機嫌な蜂楽は、むーっと唇を前に突き出すと食堂の机に突っ伏した。
「なにそれ? インスタ?」
「そ。これ見てよ!」
食いついてきた千切に携帯画面を見せる。そこには、他のメンバーと楽しそうに写っている潔の姿があった。
「潔……と、他のドイツメンバー?」
「そ〜」
蜂楽が千切に見せたのは、ドイツチームで運用しているインスタグラムのアカウント。最近、絵心はBLTVだけではなく、SNSも各チームで運用するように言いつけていて、このアカウントはその一部だ。なんでもファンビジネスは金になるからとのこと。蜂楽にはよく分からないが、たまにチームのメンバーからカメラを向けられ、インスタグラムに写真を載せられることがある。お前は顔が可愛いから数字が稼げる! のだそうだ。なんの数字? って感じだが、写真を撮られるのは別に嫌いじゃないので好きにさせている。
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