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    dh86_f

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    dh86_f

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    迷子になっちゃったので供養
    暗〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い
    死ネタのbcis。最初は🐝が、後に‪🌱‬が死んじゃいます(遠回し表現)し、サッカーしてません。
    私好みの薄暗さですが許してください。

    #蜂潔

    ゆめ。「…へ?」


    目を開ける。
    とん。と足に小さな衝撃を感じて足元へ目を向ける。
    足が、体を支えていた。
    その足に寄り添うように白と黒のサッカーボールが寄っていた。


    瞬時にこれは夢だと自覚をした。


    サッカーと、距離を置いてしまった。
    数ヶ月前に起きた事故で、潔は2つ失った。
    夢を叶えられなくて、それが嫌で、自覚をしたくなくて、目を逸らしたのだ。


    足が動かない。


    だから支えてる足の感覚が懐かしくて、恨めしくて、泣きたくなった。
    良い歳をして、情けないものだ。
    夢でしか、サッカーを出来ない。否、夢でもできない。

    だって、潔の足は動かない。


    「いさぎ。」


    俯く潔に、声が聞こえた。
    がばっ、と勢い良く顔を上げる。

    だって、この声。
    楽しくて、煽るような、大好きな、もう聴けない声だったから。
    青い監獄の中で、1番最初の相棒。

    「…ぁ、……。」

    声よりも先に涙が出た。
    目の前の蜂楽は笑っている。
    零れちゃった。泣き虫だなあ、潔は!なんてきゃらきゃら笑って寄ってくる。
    距離を置いたサッカーと似ていて、罪悪感が押してきた。
    はらはらと流れる涙を蜂楽の指が拭う。

    「ば、ち…、ばちら……。」

    「うん。そうだよ、潔がだーいすきな俺! 反応微妙過ぎて忘れられたかと思ったけど、忘れてなかったんだ。」

    にゃは、と人懐っこく笑った蜂楽から目を逸らした。
    忘れられるものか。

    好きだった。
    大好きだった。
    国は離れてしまったけど、所属するチームは違うけれど。
    サッカーがあれば蜂楽と繋がっていれると思っていた。
    好きな人と、ずっとずっとずっと大好きなサッカーをできると思っていたのに。
    忘れられるか、と首を振ると蜂楽はだよね〜。なんて気の抜ける様な返事。


    「ごめん、。ごめん…、ばちら。あのとき、…」

    「んーん、大丈夫だよ、潔。サッカー出来なくなったのは悲しかったけど、潔が生きてくれた。俺はそれで十分!」






    数ヶ月前に起きた事故。
    オフの日にデート。
    甘い響きがするそれの結末は酷い赤色に染まった。
    耳に聞こえる走行音。
    横に顔を向ければそこには大きなトラック。
    ぁ、なんて声がこぼれると同時に、危ない!と腕を引かれる。


    どん。














    そこからはなにも思い出したくなかった。
    視界に広がったのは地面。

    足が痛い。

    熱を持って、ぎぐぎぐと痛む。
    血の気が、引く。


    何が起きた?


    蜂楽と出掛けていて、1歩後ろに蜂楽がいて。
    横から車が。
    何で? 何が起きてる?
    危ないって、声が聞こえて。
    体を押されて。

    蜂楽は?

    ドッ、ドッ、と耳が騒がしい。
    痛む体が自由に動かなくて、瞼が落ちそうになる。
    誰かが救急車!!と叫ぶ。

    それから暗転。


    目を開けたら真っ白な部屋にいた。
    ぴ。ぴ。と規則的に聞こえる音とツンと鼻を刺激する消毒の香り。
    目を覚ましてから最初に聞いた声は母さんの声だった。

    母さんが言うには、トラックは居眠り運転だった。
    看護師が言うには、自分の膝から下はそんな事故で潰れて、動かなくなってしまった。

    それから、目の前の白衣を着た人は告げた。
    蜂楽は轢かれそうになった俺の代わりにもろにぶつかって即死だったと。














    「ここにお前がいるって事は夢だな。」

    失ったものが目の前に現れた。
    身体の一部と、最愛の人。

    「潔ったら、結構な無茶したでしょ。俺、見てたんだからね! さすがに睡眠薬イッキは駄目だよ。場合によってはシャレにならないんだから」
    「…。」
    「あ、いま何で知ってるんだろって思った? にゃはは、空の上から見てたんだ!」
    「……。」
    「サッカーボールを眺めたり、トラックを見る度にビクビクしたり、時々外を徘徊したり。」
    「………。」
    「俺の試合映像を見て、ずーっと泣いてんの。俺、全部知ってるよ。」
    「…。」

    何にも言わず、口を開かない俺に、蜂楽は笑った。
    仕方ないなあ。と、小さな子供に微笑むように。
    離したくない。と、好きな人の手を掴むように。

    「ね、潔。生きたいなら俺が意味をあげる。」
    「…え…?」
    「だってさ。今の潔、今にも死んじゃいそうだもん。でも、もう嫌なら俺が終わらせてあげる。」
    「い、…嫌、なんて事は、なくて……、」

    違う。彼が生かしてくれた人生。続けさせてくれる毎日を、終わらせたいなんて考えていない。

    本当??

    終わりたい。

    本当に???

    死にたい。

    本音????

    どこかに行きたい。
    どこか、どこか、自分の知らない場所に。

    ???????????


    あ、れ…?
    …終わらせたくないはずなのに。









    うそつき。と厳しく冷えきった声が降ってきた。


    「虚無感と罪悪感で生きてる潔に、嫌じゃないことってある? 全部知ってるって言ったじゃん。ほら、とっとと決めて。生きたい?それとも、死にたい?」



    「ぁ…。」


    天使のような、死神が、かわいらしく、嗤う。
    無機質な、美しい琥珀色の、瞳と、目が合う。
    優しい優しい温度を宿した懐かしいそれに、潔はぴたりと止まった。


    「ごめんね、潔。二人が死を分かつまでって言うけど、俺、そんなに良い子じゃないから。潔が望むなら死んでも一緒にいたいんだ。」

    だから、ほら。











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