星奏「ちょっと外に出てみない?良いものが見られるよ」
群島諸国への玄関口でもある港町の一角に佇む小さな宿。昼間の喧騒とも言える程の賑やかさは身を潜め、海だけが波の音を静かに奏でているそんな夜に唐突とも思えるような誘いを受けた。
こんな時間に何が、と思いつつも普段マイペースを崩さない彼からの誘いが珍しくつい素直に応じてしまった。
宿から少し離れた、船着き場と海を見渡せる広場へと足を運ぶと不思議な事にこんな夜更けだと言うのに疎らながらも幾人かの姿が見受けられた。皆揃って上を見上げている。
それに釣られて視線を上に向けると雲一つ無い満天の夜空が拡がり、その中を幾つもの星が流れた。まるで光の雨粒がパラパラと落ちていくように。
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