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    フィンチ

    @canaria_finch

    🔗🎭を生産したい妄想垢

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    フィンチ

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    それぞれの飼い主が🐑と🔮なわんにゃんのその後の話
    ※人化注意

    #Sonnyban
    sonnyban

    lovely my kitty 2 主人の腕に抱かれながら、子猫はぺしょりと耳を伏せていた。時折漏れ聞こえる鳴き声もひどく悲しそうで、その響きに良心が痛むのかいつにも増して優しい声音で話しかけられるものの、しょんぼりと萎れてしまった心にはなかなか届かない。それに気付いているのか子猫の主人―浮奇・ヴィオレタは困ったと言わんばかりの苦笑いを浮かべていたが、前方からやってくる人物の姿を目にしてすぐに表情を綻ばせた。
     少しばかり歩調は早めたものの、腕に抱く子猫を大きく揺らしてしまわないように歩み寄ると嬉しそうに話しかける。
    「ふーふーちゃん、奇遇だね」
     通りかかったのは愛犬と散歩中のファルガー・オーヴィド。予期せぬ遭遇だったのか少しばかり驚いた表情であちらも歩みを進めた。
    「珍しい時間に会うな、今日は休みか?」
    「この子を定期健診にね」
     苦笑まじりにこたえながら視線が向かう先には元気のない様子の子猫。連れて行かれた先で何があったかは同じく動物を飼う者として想像に容易い。とはいえ、連れて行かないという選択肢も存在しない訳で、出来ることといえばなるべく穏便かつ迅速に事を済ませて後は存分に甘やかすなりするといった程度。加えて、そのご機嫌取りも難航しているときては困り顔にもなってしまう。
     そんな調子で飼い主同士は状況を理解していたが、傍らに控えるサニーはというと心配そうに子猫―アルバーンを見上げていた。抱きかかえられたままの子猫の様子はその位置からはほぼほぼ見えず、そのくせ弱りきった鳴き声はしっかりと耳に届くものだから気が気でない。しばらくは大人しく待っていたものの、居ても立っても居られなくなり声をあげるとそこでようやく子猫の様子に変化が表れる。
    『アルバーン、大丈夫か?』
    『…さ、にぃ?どこ?』
     見上げた視線の先で小さな耳が声の出どころを探して動いているのが目に入った。ぴこぴこ動く様は可愛らしいが今はそんな場合ではない。
    『こっちだ、下にいる』
     居場所を知らせるようにそう続けると子猫は主人の腕の中から顔を覗かせ、
    『さぁにっ!』
    なんとサニー目がけてそこから抜け出してしまう。突然のことに驚いたのはサニーだけではなくその場にいた飼い主達も。咄嗟に捕まえようとした浮奇の手は間に合わず、自分が受け止めなければと動いたサニーの眼前で小さな体をすくいあげた手はファルガーのものだった。
    「おっまえ……とんだお転婆だな?!」
     猫が高いところから落ちても大丈夫なのだと頭では理解していても、やはり目の前で、しかも子猫がとなれば冷静ではいられない。それが飼い主ともなればなおのこと。なんとか抜け出そうとじたじた動く子猫に手こずりながらもファルガーが浮奇のもとへと戻すと、普段よりも少しばかり強い力でアルバーンは抱きしめられた。
    『う、き…?どうしたの?』
     普段とは違う主人の様子に子猫もすっかり大人しくなり、気遣うように鳴き声をあげるが優しい声が返ってくることはなくただ抱きしめられたまま。
    その腕から伝わってくる僅かな震えに子猫は不安を募らせ鳴き続ける。
    『いたい?いたいの?うき?』
     けれども主人がそれに応えることはなく、ようやく声が聞けたのは別の声に対してだった。
    「うちで休んでいったらどうだ」
    「うん…、そうしようかな」
     どことなくホッとしたような声に子猫の耳は再びぺしょりと伏せられる。同じように声をかけてるはずなのに自分の思いは伝わらない。それが仕方がないことだとしても幼い心はしょぼくれてしまう。
     そして、全く異なる理由から歯がゆさを感じているのは、一連のやり取りをただただ見上げているしかできなかったサニーも同様。子猫を助けるつもりはあっても、飼い主達は先に手を伸ばして受け止める。それはごくごく当然のこと。あの子が怪我をせずに済んで良かった。そうとだけ思えたらどんなに良かっただろう。
    「アルバーン、あんまり危ないことしたらダメだよ」
    「さて、今日の散歩はここまでにするぞ、サニー」
     ふたりと2匹でいられたら嬉しいはずなのに、一度生まれた心のもやはなかなか晴れてはくれない。家についてからも大人しく寄り添っているだけの2匹の様子を不思議に思いつつも、やはり飼い主達がその理由に思い至ることはないまま時間だけが過ぎていった。




    ……
    ………
    …………
    ……………



     主人もベッドに入り、シンと静まり返った家の中。普段ならば眠りについているはずの時間だというのに、未だ寝床に向かうこともなくその瞳は窓の外の月を見上げていた。雲ひとつない夜の空に浮かぶ月はまんまるで、放つ光は白く眩い。窓から差し込むそれはまるでスポットライトのよう。その月明りを浴びながら、小さな願いが心の内に溢れだす。

    (おはなしできたらいいのに、いっぱいつたえたいことあるのに)

     そして同じ月を見上げながら、異なる願いがもうひとつ。

    (あの子を守りたいのに、俺が守りたいのに)



    ――  になれたら、そしたらきっと…



    ……………
    …………
    ………
    ……




     PiPiPiPiPiPi……PiPiPiPiPiPi.

     アラームの音にゆるゆると意識を浮上させられながら、何かが自分の身体の上にのっていることに気付く。動けないほどではないものの、仰向けに腹のあたりに感じる確かな重み。
    「――き……ぅ…きっ!」
     そして、聞き覚えのない声。全く心当たりのないそれらは、寝起きで状況把握が出来ていないことも相まって浮奇の心に恐緊張を抱かせる。いったい何が起きているのか。ごくりと唾を飲み込んで恐る恐る目を開けると、見覚えのない子供が自分に跨っている姿が目に入った。そんな異様な光景に一瞬声を失くすも、子供は浮奇が起きたことに気付くと嬉しそうに顔を綻ばせた。
    「うーきっ、おはよ!」
     そのあまりにも無邪気な反応に思わず拍子抜けしてしまう。絶対おかしいはずなのに、何故か警戒心が保てない。だがそこで更に異質なものの存在に気付いてしまい、浮奇はぎょっとして目を見開いた。
     子供の茶色い猫っ毛の髪の隙間でぴょこぴょこと動いているまろい三角の獣の耳。ゆらゆらと小さな体の後ろで揺れている細長い尻尾。そして、あまりにも見慣れた左右で異なる色をしている瞳。
     だが、まさかと思うにはあまりにも非現実的過ぎる。その可能性を自ら口に出すのはさすがに憚られ、動揺を隠しきれぬまま子供に問いかけた。
    「えぇと……ぼく、お名前は?」
    「あうばんだよ!うき、わすれちゃったの?」
     きょとんと瞳を丸くしてからこてんと首を傾げる姿はあどけない。そして、この名前を出されてはさすがに認めざるをえなかった。
    「ぁ…うん、そうだね、アルバーン、大丈夫、ちゃんと覚えてるよ」
     そう告げると返ってきたのはにぱっという効果音でも聞こえてきそうな笑顔。浮奇が困った顔で体を起こし小さな頭を撫でると、あんまりにも嬉しそうに抱きついてきたものだからこれが決定打となった。この子は愛猫に間違いない。
     とはいえこれからどうしたものか。今日は平日なのだ、子猫の時なら専用の持ち運びのできるケージに入れて職場に連れて行くこともできたが、この状態でアルバーンを連れて行くわけにも、残して出勤するわけにもいかない。かといって仕事を休むわけにもいかず、となれば誰かに預かってもらうしかない。誰にって、それはもうひとりしかいないだろう。
    (迷惑かけるけど他に頼れる人もいないし…)
     ごめんと謝りながら預かってほしいものがあると連絡を入れると、浮奇は返事は待たずにベッドから下りて支度に取り掛かった。
     出勤の準備もそうだが、まだ朝食はおろか顔を洗ってすらいない。そういえば人の姿になったとしてこの子は何が食べれるのか。キャットフードを与えるのは視覚的に抵抗があるし、猫に食べさせても大丈夫な食材をひとまず確認しなければ。
     そんなことを考えながら洗面台へと向かう浮奇の後ろを、アルバーンはふんふんと鼻歌を奏でながら楽しそうにぽてぽてついてくる。それは見慣れたいつもの光景と重なって、朝から既に疲労気味の浮奇の心を和ませるのだった。


     朝食をとり、身支度を整えた浮奇はアルバーンを連れて普段よりも少し早めに家を出る。出勤前に向かうは予め連絡を取っていたファルガーのもと。彼からは訪問について了承の返事はあったものの、あちらも何か立て込んでいるようで説明することがあるとも言われていた。その内容が気にかかりはするが、現在自分の身に降りかかっていることを思えば考えたところで仕方がない。
     外に出るにあたって耳と尻尾は隠せるようにフード付きのパーカーを着せたものの、大人サイズの服をプライマリースクールにさえ入っているかも怪しい年頃の子供に羽織らせればどうなるかは火を見るより明らか。服に着られるどころか引きずりかねない。そうとなればこれしかないと、浮奇はアルバーンを抱きかかえて向かった。
     出迎えたファルガーは浮奇がひとりではないことに酷く驚いた様子だったが、玄関先でする話でもないと判断したのかすぐに中に入るようにと促してくれる。
    「突然ごめんね、ふーふーちゃん」
    「いや、それは別に構わんがその子は…」
     そしてリビングにまでたどり着くと、浮奇はアルバーンの被っているフードを外させて顔がよく見えるようにしてから口を開いた。
    「預かってほしいのは、この子……アルバーンのことなんだ」
     驚くところまでは想定内。あとは信じてもらえるか。全く信じてもらえないような付き合いではない自信はあるが、こんなおかしな事態ともなれば話は別。簡単に受け入れてもらうのは通常であれば難しい。そう、通常であれば。
    「あるばにゃん?あー……そうか、うん、分かった」
     ファルガーの反応は浮奇にとっては想像もしないもので、それがどういった意味なのかも判断がつかない。耐えかねた浮奇が不安げに呼びかけると、ファルガーはそちらに応えるのではなく、部屋の奥へと向かって声をかけた。
    「サニー、もう出てきていいぞ」
     そういえば、いつもなら彼と一緒に出てきて迎えてくれる愛犬の姿がどこにもない。それに、その言い方ではまるで隠れていたみたいだ。不思議そうにアルバーンと顔を見合わせてから浮奇がファルガーの視線の先を追うと、そこから出てきたのは金髪の端整な顔立ちをした青年だった。だが特筆すべきはそこではない。金糸の隙間からは見覚えのある獣の耳が見えるし、何よりその名前だ。まさか、いや、そのまさかなのか。
     咄嗟のことに言葉が出ない浮奇に変わって、腕に抱かれたままのアルバーンが声をあげる。
    「さーにぃ!」
     すると、その声に反応した成年は感情の読めない美貌をすぐさまとろけさせて駆け寄ってきた。
    「あうばーん!」
     その勢いについ気圧されてアルバーンを渡してしまった浮奇だが、あんまりにもふたりが嬉しそうなものだから声をかけるのも躊躇われる。それはファルガーも同じだったようで、いつの間にか隣に移動していたかと思うとやれやれといった風に口を開いた。
    「色々と話したいのはやまやまなんだが、そろそろ仕事に行かないとじゃないか?」
    「そうだった…!」
     ハッとして浮奇が視線を向けた先では、遅刻とまではいかないもののあまり余裕がない時刻を時計の針はさしている。ひとまず預かってもらうことは出来るのだから、今は仕事に行かなければ。
    「それじゃあ、なるべく早く帰るようにするからふーふーちゃん…とサニーも、アルバーンのことお願いね」
     そう伝え、家を出ようとした浮奇の背中を舌ったらずな声が呼びとめる。
    「うーきっ」
     振り返ったその先では、サニーに抱きかかえられたアルバーンが小さな手を振っていた。
    「いってらっしゃい」
     随分と久しぶりに言われたようなその言葉に、浮奇は少し驚いたような表情をしたがそれはすぐに綻んでいく。
    「うん、いってきます」
     見送りの言葉に微笑んで返すと、可愛い愛猫はそれはそれは嬉しそうに笑ったのだった。




    ======================


    【アルバーン】
    生後3か月にまで成長した飼い主が大好きな子猫
    人の姿になった時は5歳くらいの見た目で、セーラー服にハーフパンツを組み合わせた制服のような恰好をしている
    飼い主は浮奇


    【サニー】
    1歳7か月ほどの普段はお利口なはずの成犬
    人の姿になった時は16歳くらいの見た目で、シャツにベストと長ズボンを組み合わせた制服のような恰好をしている
    飼い主はファルガー


    ======================


    「で、お前はいつまであるばにゃんを抱えてるつもりなんだ、サニー?」
    「…別にいいだろ」
    「抱き癖がついたらどうするんだ」
    「!」
    「そのてがあったかじゃない、こら、下ろしなさい」
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    フィンチ

    DONEふわっとしたMHパロ、ガノレク🔗×アイノレー🎭の馴れ初め
    仲良くなれるかな? とある村のアイルーキッチンで働き始めたアルバーンには悩みがあった。仕事自体は新入りということもあって覚えることも多く大変ではあるが違り甲斐がある。コック長は厳しくも懐の大きいアイルーであるし、手が足りてないようだと働き口として紹介してれたギルドの職員も何かにつけて気にかけてくれている。それならばいったい何が彼を悩ませているのかというと、その理由は常連客であるハンターの連れているオトモにあった。
    「いらっしゃいニャせ!ご注文おうかがいしますニャ」
    「おっ、今日も元気に注文取りしてるなアルバにゃん」
    「いいからとっとと注文するニャ」
     軽口を叩きながらにっこりと愛想の良い笑みを浮かべてハンターを見上げるアルバーンは、傍らに控えているガルクからの視線にとにかく気付かない振りをする。そう、このガルクはやってくるとずっとアルバーンを見てくるのだ。しかも、目が合っても全く逸らさない。ガルクの言葉など分からないから当然会話も成立しない。初めて気付いた時には驚きつつもにこりと笑いかけてみたのだが何か反応がある訳でもなく、それはそれは気まずい思いをした。だからそれ以来、気付かない振りをして相手の出方を窺っているのだが、今日も変わらずその視線はアルバーンを追っているようだった。
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