眠れない夜を迎えるよりも 本日の営業が終了したモストロ・ラウンジのVIPルームで、アズールの言葉を聞いたフロイドは大きく不満の声を上げた。
「はあぁ?」
剣呑な顔を見てもオーナーは涼しげな表情のまま、机に並べられた書類をまとめた。
「どうしてお前が不服そうなんですか。僕はジェイドに頼んだんです」
「それにしたっていきなりすぎじゃね?」
「ようやく話がついたんです。早く正式に契約してしまいたいですからね。あいにく僕はほかにやることがあるし、ジェイドだけでも問題ないでしょう。ちょうど買い付けの用事もありますし、明日出て、イレギュラーのことも考えて、日曜中に帰って来れば問題ありません」
「そういうこと言ってんじゃねーんだよ」
デスクに両手をついて身を乗り出す。怒気を含んだ低音はほかの寮生だったら恐怖で縮こまりそうな迫力だ。
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