欠片 その白く透き通った首筋に指を這わせると、〈私〉は少し熱を帯びた声で囁く。
「誘ってるの?」
そんな訳ないでしょ、仮にも自分の身体なんだから。
ため息を漏らすと、〈私〉が咲(わら)う。
鈴を転がしたような声だ。生憎、わたしではそんな真似などできない。
「あなたがこの身体の主だったら、きっとわたしに見向きもしなかったでしょうね。」
無意識に棘のある言葉を紡いでしまう。
〈私〉に伝えたいのは、こんな言葉じゃない。
もっと濃厚で、だけど純粋な言葉。想いを伝えるにはありきたりかもしれないけれど、わたしにとってはどこまでも特別な言葉。
たったひとことが、ずっと言えずにいる。
いつも一緒にいるのに、伝える機会はいくらでもあるのに。
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