また彼と会うことはなかった。大学生になったフェイスは、もうさすがにブラッドの扉を中から見るのに飽きてしまった。彼のためにあるマンションの滞在時間は、きっと既にフェイスの方が多くて、持っている合鍵を回す音が来ては帰るたびにため息をついてしまう。
率直に言ってしまうと、実兄は社畜だった。朝から晩まで仕事をしていると思えば、食べる時間も寝る前の時間も風呂の時間もトイレの時間でさえも仕事のことを考えている。そんな男に趣味はないのではないかと言えば、彼には彼で大切にしているものがあるし、空き時間はそれに当ててもいるようだった。しかし、仕事の合間に行える趣味で、家への滞在時間が増えるわけではなかった。
ブラッドは仕事馬鹿なのである。
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