教令院②「カーヴェ」
呼ばれた声に振り返って、アルハイゼンの姿に目を見開いた。
「アルハイゼン。その服。スーツじゃないか」
「モンドの方の服屋から仕立てたものが届いたんだ。君もスーツを持っていたんだな」
「今日はね。貸してもらった」
カーヴェは自分の生活には最低限の金しかかけないことを知っている友達が、スーツを貸してくれた。曰く、もう買い換えたからいらないのだと。今夜行われる教令院のパーティーは新年度の祝いを兼ねていて、官員たちの顔見せの趣旨が大きい。
(一年目ならまだしも、後輩もいるからスーツ貰えてよかった)
返さなくていいからと渡してくれた友人に感謝だった。アルハイゼンは思っていたよりそっけなく、「まぁ似合ってるんじゃないですか」と口にする。
5223