｢か弱い女｣｢か弱い女｣の話。


椿姉さんは胸がないこととか、家庭力がないことに相当コンプレックスを抱いていまして……だから、もし三男君が家庭力もあって、可愛くてお胸もおっきい女の子を好きになっちゃった〜♡とか言う話をしてこようもんなら椿は多分泣き崩れると思います。

泣き崩れる場所も場所でして。
だいたい椿は第三者がいる場所では｢イケメン｣海上椿になろうと仮面を被るので、あんまり不満を外に出さないんですよ。で、三男君とデートが終わって歩いて帰る時涙がポロッと出ちゃって、あ、泣いちゃダメだって、バカ、って思ってて止めようとしても次から次に涙がぽろぽろこぼれ落ちちゃうから、しょうがないからって人気の少ない公園のベンチに座り込んで、うううぅーー……って唸ってそう。家に帰ると姉妹達がいるから家の中ではろくに泣けないし(心を読んでくるやつとかいるし)外だと人がいるから迂闊に弱い自分を出せないしで、最適解は公園なんでしょうね。

自分とは真逆の女を好きになっちゃった三男君を責め立てず、自分がダメな子だからで全てを収めてしまう椿ちゃんに｢何してるの？｣って声をかけられて、なんだ？と思ってパッと上を向いたらさっきまで一緒にいた三男君がいて、お前とデートしてる時に全く僕を見ないからなんなのかなと思ったらこの様だよ……ってグチグチ言われながら、な、何かあったなら僕がそばにいるから……相談するならすればいいんじゃないかな？って照れながら言うんだけど、
でも私はお前が好きな人の特徴で泣いてるんだけどなぁって思いながら、優しさにまたぽろぽろ泣いてて欲しい。えっ！？また泣くの！？って驚いてそうだけど。

少しひと呼吸おいて、落ち着いてきたところで、椿ちゃんが三男君を真っ直ぐ見つめて、｢私の事嫌い？｣って言うもんだからえっ？って最初はたじろぐけど、いや、そんなことないけど？ってちゃんと否定する。そっか、ってホッでした後、じゃあさって｢女子力もまともになくて、胸もなくて、家事も出来なくて、料理もろくに作れなくて、女の子らしいこと何一つできなくても嫌いって言わない？｣ってメンヘラっぽいことを言う。最初は悩むけど、でもそういうのができない椿も椿らしいよなって妙に納得してしまう節があって、自分では何も思ってなかったんだけど、三男君を見つめる目が迷っている気がして、ここでようやく事の重大性に気づく。

＿＿椿がこんなことで気に病むなんて人生で1度あるかないかぐらいじゃないか？？

だから、僕はそんなことないよ、僕は椿だから好きなんだよ？って沢山話してくる。椿がほんと？ほんと？って言って来るんだけど、椿のことを好きなことは揺るぎないので、僕は君が大好きなんだよ？って言ってくるので、とうとう、｢でもチョロちゃんはおっぱいがおっきくて、家庭的な可愛い女の子が好きなんでしょ！？｣って逆上しちゃう椿ちゃんが出てしまって、引いちゃったかなってまたその場から逃げようとするんだけど、待ってって手を掴んで、逃げんなよって見たことないぐらい真っ直ぐな目で見てくる。ちゃんと話すようだけど、僕はね、推しと恋人とで好きな人のタイプは違うからね？って言ってたらえっ？ってキョトンってするから、はーーって一息入れたあとマシンガンのように、

｢僕はねリアルと2次元では好きな人の好みが違うんだよ、そりゃおっぱいの大きな女の人がいいって言うのはあるよあるけどさ、君みたいに顔が良くて性格も良くて人柄も良くてかわいい女の子この世の美女かきあつめても椿しかいないし、そんな子が僕のことを好きだって言ってくれるなんて今後の人生の中でもう二度とないと思ってるから、そんなことでなよなよしてないで椿は椿らしくいてよ、その椿を僕を愛してあげるから。｣

ってはっきり言われて､ｱ､ｱｱ……って供給が多すぎて口開けてる椿に対してうぅーーーってなりながら、顔を近づけて、こうでもしなきゃ君は分かんないの？ってほっぺたにキスしてそう。ち、ちゅう……ってなって完全に崩れた椿に対して顔真っ赤にしながら、こ、こここ、こういうことができるのが恋人のいい所だからね……って言ってそう。初めて好きっていう感情を行動に出してくれて、それも初めてキスされたから椿も顔真っ赤にして、う、うん……って目逸らしてそう。

そうやって自分にとっては些細なことで悩んでいる椿が愛おしく思えてくるのと同時に、か弱い女の子なんだなあって、支えたくなっちゃう三男君はいます。そういう話があって、椿のことを｢か弱い人｣って言ってるんですわな。