飲み干したモヒートのグラスをそっとコースターに置くと、そいつは――グエル・ジェタークは、腑抜けて丸まっていた背筋を一直線に伸ばした。酔っぱらいとは思えぬ流麗な所作でソファに座り直して、軽く咳払いをする。
「ケレスさん。聞いてくれませんか」
ようやくか、長かったな。お前のその台詞はこれで二回目だ。一回目は約二時間前の退店後間もなくだった。
商談中いつになく眉間の皺が深かったから、気分転換にでもと気に入っているショーパブに誘ってみたのだが。ショーの最中も、キャストに話を振られても、大真面目な顔で酒を飲み続ける姿は異様としか言いようがなく、厄介事に首を突っ込んだと悟った時には離脱する機会は失われていた。
1213