ぼくの名を呼んで◇
美しい、という言葉が相応しい人だと思った。
男の人に、ましてやおじいちゃんを形容するのに適した言葉ではない気がしたけれど。
シルバーブロンドの髪を後ろに撫でつけたその人は、大きな物音に目をぱちくりと見開いて、音源ーーすなわち、ガラス窓を割って建物に侵入しようとしていたぼくを見ていた。
流行りの俳優やモデルに興味のないぼくでも、目を奪われるような整った顔立ちをしていた。今の状況を忘れて、思わずぼうっと見惚れていると、その人は手に持っていた植木鉢を床に置いて、緩慢に立ち上がり近付いてきた。
気が付けば文字通り、目と鼻の先にその人の顔があった。
吊り目がちで、くっきりした二重瞼。すっと通った鼻筋。形の良い眉と唇。それぞれがバランス良く収まっている。
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