夜汽車にて。(仮) ガタンゴトン、と仰々しい音とともに、足元がかすかに揺れている。自身が汽車に乗っていることに、グリーンは数秒かけて気が付いた。
立ち竦む自身の真正面には、大きくくり抜かれた車窓があり、そこから見える景色は今まで見たことがないくらいの、満天の星空だった。
濃紺にも漆黒にも見える闇の中、白をはじめ、時折、赤や青に光る星々が、一斉に歌うように瞬いている。
星明かりの他に、建物や電灯の明かりも影もなく、まるで汽車ごと宇宙空間に放り出されたかのように見えた。
ずっと醒めていた筈なのに、今微睡みから目を覚ましはじめたばかりのようなぼんやりした感覚を覚えていた。
そもそも、自分は一体いつ、何のために、この汽車に乗ったのだろうか。改札を通った記憶もひどく曖昧で、思い出そうとすると脳内に白い靄が立ち込めてきて、これ以上の思考を遮断してしまう。
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