きみに咲く 防衛任務で三輪隊の戦闘員たちが担当エリアに向かう道すがらだった。
米屋がすでに四年人の手が入らなくなって雑草だらけになってしまった、どこかの家の庭先に咲いていた、三輪隊の隊服を思わせる色合いのそれに目を留めたのは。
「お、リンドウじゃん」
「……」
「何その目」
立ち止まった米屋より数歩先に行った奈良坂の端正な顔が驚いたような表情で彩られていた。
「いや、タンポポやサクラ程度ならともかく、おまえが花の名前を知ってるなんて珍しいなと思って」
「ひっでえ言い草」
米屋はからからと笑い、だが少しだけ様子を改めて照れくさそうに告げた。
「昔、教えてくれた人がいるんだ。薬にもなるし、こんなキレーな感じの花なのに竜の胆って書くんだろ、確か」
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