Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
    Pixiv https://www.pixiv.net/users/3373730/novels
    お題箱 https://odaibako.net/u/palco87

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🎵 🍆 🍇 💘
    POIPOI 76

    palco_WT

    ☆quiet follow

    米三輪テーマアンソロのおまけの小話。
    特にネタバレにはならないですが拙作「遠い約束」を読んでからだといいかも。

    #米三輪
    riceTricycle

    きみに咲く 防衛任務で三輪隊の戦闘員たちが担当エリアに向かう道すがらだった。
     米屋がすでに四年人の手が入らなくなって雑草だらけになってしまった、どこかの家の庭先に咲いていた、三輪隊の隊服を思わせる色合いのそれに目を留めたのは。
    「お、リンドウじゃん」
    「……」
    「何その目」
     立ち止まった米屋より数歩先に行った奈良坂の端正な顔が驚いたような表情で彩られていた。
    「いや、タンポポやサクラ程度ならともかく、おまえが花の名前を知ってるなんて珍しいなと思って」
    「ひっでえ言い草」
     米屋はからからと笑い、だが少しだけ様子を改めて照れくさそうに告げた。
    「昔、教えてくれた人がいるんだ。薬にもなるし、こんなキレーな感じの花なのに竜の胆って書くんだろ、確か」
    「それなら聞いたことがあります。リンドウは花も葉もとても苦いとかで、だから熊の胆よりも苦いから竜の胆、って」
    「蛇ならともかく竜なんか食ったことある奴なんかいねーのに?」
    「例えですよ、つまりは」
     古寺が呆れたように応じる。
    「でも花屋で見るのに比べると少し小さくないか?」
    「……これはたぶん自然のリンドウだな。この家の人が山かどこかで見つけてくるかして庭に植えたんだろう。ああいう場所で売っているやつはそれ用に栽培されて背が高いものが殆どらしいから」
     それまで繁茂した草に埋もれるように咲いた小さく可憐な花を黙って見つめていただけの三輪が淡々と口にした。かすかに柔らかな気配を、その黎明がにじんだようなまなざしに浮かべながら。
     へえ、と奈良坂も古寺も三輪の言葉に感心したようにそれぞれ呟いた。米屋以外は。
    「姉さんが好きだった花だったからな。さあ、行くぞ。五分前には現着したい」
     感情の色を見せずにそれだけを言い添えた隊長の言葉に隊員たちはそれぞれ頷いて、止めた足を再び動かした。
    「なあ、秀次。あれの花言葉ってさ、『悲しんでいるあなたを愛する』って言うらしいじゃん」
    「……らしいな。本当によく知ってる」
    「ホント、オレもよく忘れなかったと思うよ。その・・・に教えてもらったのは五年以上前なのにさ。けどさ、オレは悲しんでようが怒ってようが、好きな奴は好きだけどな」
     それだけを三輪に囁くと、さて一番首を貰うかね!と米屋は視線の先にじわりと開こうとする門に向かって爽籟のように駆け出した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💎👏💕👏👏👏👏👏💘💘💘
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    水鳥の

    MOURNING初のイコプリSS。大半が十九歳。関西弁は空気で読んでください。 付き合ってからと言うもの、王子は事あるごとに生駒に好きを伝えたがる。
    「好きだよ、イコさん」
     時も場所関係なく伝えられる言葉に、生駒は不思議そうに尋ねたことがある。
    「なんや、王子、どないしたん?」
    「うーん、何でもないよ。ただ言いたいだけ」
    「それなら、ええ」
     にこにこといつもと変わらない笑顔を張り付けて、王子は生駒に言う。生駒は、本当にそうなら問題ないな、と頷いた。
     
    「で、今も続いてる、と」
     生駒から経緯を聞いていた弓場は、片眉を器用に持ち上げて嫌そうな表情をした。
    「そうや」
     生駒はいつもと変わらない表情で弓場の問いに答えた。
     日差しの気持ちよい午後、ボーダーのラウンジの一角に何故か十九歳組が集まり、何故か近況はどうなのかと言う事になり、何故か、王子と付き合っている生駒の悩み相談が開始された。
    「王子も可愛いところあるじゃないか」
     嵐山が、どこが悩みなんだ? と不思議そうに言う。
    「いや、何回も続くと生駒も鬱陶しいんじゃないのか?」
     嵐山の問いに柿崎が答える。
    「いや、そんなんないな」
     生駒は、当たり前だと言うように柿崎の言葉を否定した。
    「ないのかよ」
    1089