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    guri

    @guriguri_000222

    🈁🐶SS練習用。拗れきった二人が好き。

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    guri

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    🈁🐶短文。
    10BD時代。
    お互いがお互いの幸せを願っているのに、自分では幸せにしてやれないって思いこんでる拗れきったコヌも好きです。

    #ココイヌ
    cocoInu

    誰かの願いが叶うころ今度の商談相手の情報収集やら業界研究やらが全然進んでねぇ、ヤバい。
    そう言って集会の後、白い顔でひとりどこかに出かけたかと思ったら重そうな本屋の紙袋をぶら下げてココはアジトに戻ってきた。
    そんなにデカくもねえ机の上に袋の中身を出しては積んでいく。どれも似たような表紙の分厚い本でオレには違いが分からない。
    「それ、全部読むのか?」と聞けば、ココは「一応ね」とくたびれた顔をして言った。
    小さなライトしかない薄暗いアジトで本なんて読んでも目が悪くなるだけだろって思うのに、ココはいつも本や資料をアジトに持ってくる。黒龍本部やその辺のファミレスの方がよっぽど環境が整っていて集中できそうなもんなのにアジトの方が集中できるって言い張るんだから、ココはつくづく変わってると思う。

    どのくらいそうしていただろうか。
    ココが一定のペースでページを捲る音が心地良くて、オレはいつの間にか眠ってしまっていたようだった。ココは相変わらずソファを背もたれにして本を読みながら、たまに何かメモを取っている。左側に本を積んで、右側にノートを広げるココの後ろ姿を見ていると何故か鳩尾のあたりがキュッと締め付けられるような感覚がした。
    「……メシ買ってくる」
    「おー」
    なんとなくこの場に居たくなくてテキトーな理由をつけて外に出た。ココの生返事は集中モードに入っている証拠だから放っておいても問題はないだろう。

    陽が沈むのが段々と早くなってきた。ついこの間までまだまだ明るかったはずなのに空はすっかりオレンジ色に染まり、遠くの方ではもう少しだけ夜が顔を覗かせている。
    メシを理由に出てきたものの大して腹は減っていない。集中しているココの邪魔にもなりたくないからそうすぐには戻れない。
    少し流すか、と目的地も決めないままとりあえず愛機に跨る。腹の奥でくすぶる得体の知れないものが気持ち悪い。このモヤモヤが晴れるまでは戻らねえと、それだけ決めてグリップを回した。

    沈みかけの夕日を見ていると、たまに思い出す光景がある。
    赤音とココが並んで歩く、その姿を少し後ろから眺めているのが好きだった。
    夕焼けに照らされて伸びた3つの影は当たり前だけど赤音が1番大きくて、その隣にはいつも少し小さいココの影がいた。今日あった面白いこと、学校でのオレのこと、毎日よくそんなに話すことがあるなと呆れるくらいココは赤音を見上げながら一生懸命話していた。
    ココの話を聞いて赤音が楽しそうにしてるとオレまで嬉しかった。楽しそうに笑う赤音を見上げて夕焼けのように顔を赤くする、そんなココの横顔を斜め後ろから眺めているのがなによりも好きだった。
    もう随分長いこと、ココが幸せそうに笑う姿なんて見ていない。
    その顔をさせられるのが赤音だけなのかと思うと悲しかった。オレじゃダメなんだと思い知るたび悔しかった。ココがオレに向ける表情はいつだって用意されたもので、あの日見た横顔みたいに心の奥から込み上がって溢れたようなものじゃない。
    ずっとその顔を見ていたから違うってことに気付いちまう自分も、傷付きたくなくて気付かないふりをしてしまう自分も情けなくてイヤだった。

    気持ちを晴らすために出てきたくせに結局それは叶わなかった。むしろ思い出さなくて良いことを思い出したせいで出る前よりも気分は沈んでいた。バイクに乗ったのにこんなにもスッキリしなかったのは初めてだった。
    とりあえずアジトに戻ってきたものの中に入る気にもならず壁にもたれてただ時間を持て余す。
    ずっとポケットに入れっぱなしだった携帯を確認してもココからは着信もメッセージも入っていなかった。どうしようかと途方に暮れていたら助け舟を出すようにグゥと腹の虫が声を上げた。ああ、そう言えばオレ飯買いに行くって出てきたんだった。別のことで頭がいっぱいになって本来の目的を忘れていた。このまま帰ったら何しに行ったんだよってまたバカにされる所だった。ココが笑ってくれるならそれでも良いかと思ったけど、やっぱりなんか悔しいからバイクだけ置いてコンビニに向かった。 

    「ココ、メシ買ってきた」
    テキトーに弁当と飲み物を買ってアジトに戻るとココは眠っていた。難しい顔して読んでいたはずの本は積み上げられていい感じの枕にされていた。
    なんだよ、寝る気まんまんじゃねえか。
    ガキみたいなココの姿に思わず笑いが溢れた。
    「……ココの寝顔なんて、久しぶりに見たな」
    いつもオレより遅く寝て早く起きるココ。「眠くねえの?」って聞いても「全然平気」ってはぐらかす。目の下にクマ作っといて平気なわけなんてないのに。ココはいつだってオレには心配すらさせてくれない。
    コンビニ袋をソファに置いてココと同じように床に座りそっと机に頬を寄せてみる。積み重なった本の分だけココの方が高いからオレの位置からだとココの表情がよく見えた。
    閉じられた目尻がとろりと下がっている。口元もほんのり緩んでいて、どことなく笑っているように見える。いつもの人を食ったような態度とは全然違う。穏やかに寝息を立てるココから目が離せない。
    なぜか大好きだったあの横顔と重なって見えた。
    「……オマエがあんまり寝ねえから、オレてっきり悪い夢でも見ちまうんだと思ってたよ。でも違ったな。そんな顔するくらい、ちゃんと良い夢見れてんじゃん」
    夢の中でくらいココにとって嬉しいことが沢山あれば良いと思う。赤音と並んで他愛もない話でもして、図書館でも公園でも行きたいところに行けば良い。その後ろ姿をオレはもう見ることはできないけれど、例えそれが夢の中の出来事でもココが嬉しいならもうそれでいい。
    不安なことなんて何もないかのように穏やかな顔で眠るココを見つめているとなんだか泣いてしまいそうになるから、オレは涙が溢れないようにギュッと強く目を閉じた。


    ------


    随分と懐かしい夢を見ていた。

    どこまでも抜けるような青空に綿菓子のような雲が浮かぶ夏の午後だった。
    いつも通りの帰り道、イヌピーは突然オレの手を取り寄り道しようぜと走り出した。
    留め金が壊れてるイヌピーのランドセルは走るたびにパカパカと蓋が跳ねる。
    その背中を見ながらオレは転ばないように一生懸命イヌピーに着いていくのに必死だった。
    『イヌピー速えよ!』
    足がもつれそうになったオレが叫んでもイヌピーは止まらない。
    『ココが遅えんだよ!』
    そう言ってイヌピーは大きな瞳をやわらかく細め、小さな歯をめいっぱい見せた満面の笑顔でくるりと振り返った。
    夏の陽射しを受けたイヌピーの金髪はキラキラと反射してまるでイヌピー自身が輝いているみたいだった。パカパカと跳ねるランドセルは影で見たら天使の羽根みたいに見えた。
    『イヌピー置いてくなよ』
    オレは急に不安になって咄嗟にそんなことを言った。
    イヌピーはキョトンとした顔を浮かべて走っていた足を止めた。
    『バカだなあココは! 置いてくわけねえよ。ココがいないとおもしろくねえもん!』
    真正面から見たイヌピーの笑顔はなんだか泣きたくなるくらいキレイだった。
    オレはその時決めたんだった。
    この笑顔のためならなんだってしようって。


    目を開くと見慣れた寝顔がそこにあった。
    ただ、いつもと違って濡れたまつ毛と苦しそうに寄せられた眉間のシワが気にかかる。
    「……イヌピー、泣いたの?」
    束になったまつ毛をそっと掬うように指でなぞる。起きるかと思ったけれどピクリと目蓋が震えたくらいで瞳が開かれることはなかった。
    携帯で時刻を確認するとどうやらオレは随分と寝こけてしまっていたようだった。
    硬い本を枕にしていたせいで首筋と側頭部が痛む。
    イヌピーがメシを買いに行くと言って出て行ったのは覚えている。そのあとしばらく作業を続けて、集中力が切れたから仮眠をとろうと思ったことも。どうせイヌピーが戻ってきたら物音で目が覚めるだろうと思っていたのにここまでの爆睡をかましたのは久しぶりで自分でも少し驚いた。
    丸まっていた背中を解そうと伸びをすれば指先にカサッと何かが触れる感覚があった。振り向くとソファの座面には雑に置かれたビニール袋。中を覗けば中身がしっかり片側に寄った弁当と飲み物が2つずつ入っていた。イヌピーがビニール袋を揺らしながら大股で歩く姿が目に浮かぶ。指摘したらきっと唇を尖らせて「食えば一緒だ」って不貞腐れるんだろう。
    目を閉じなくても思い浮かべられるくらいイヌピーのいろんな顔を見てきた。それでも泣いた顔だけは記憶に無い。赤音さんの葬式も、慕っていた人の訃報を聞いても、どんなに酷い怪我を負ってもイヌピーはガラス玉のような瞳を揺らめかせるだけで涙はひとつも溢さなかった。
    イヌピーには笑っていてほしい。もう随分そんな顔を見れていないけど、泣くくらいなら笑っていてほしいと思う。
    そう願う気持ちはウソじゃないのに、泣かないイヌピーの涙の理由が知りたくて仕方がない。
    「……オマエに泣いてもらえるヤツは幸せだね」
    涙の跡が残るまろい頬に手を伸ばす。
    そっと唇を寄せるとそこは少しだけ涙の味がした。
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