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    guri

    @guriguri_000222

    🈁🐶SS練習用。拗れきった二人が好き。

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    guri

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    最終軸ココイヌ。
    ケツで抱くタイプの受けが好きなのでそういう雰囲気が出せてたら嬉しいなと思います!

    #ココイヌ
    cocoInu

    「あした、仕事休みます」ココに呼び出されるのは久しぶりだった。そもそもココはオレを呼び出さない。呼び出すくらいならデパ地下の惣菜を買い込んで「来ちゃった」とうちのインターホンを鳴らしに来る、そんな男だ。そのココが電話越しでも十分に弱っている事が分かる声で「これたら来てほしい」と言うんだから、これは一大事だ。

    朝からダラダラと過ごしていたベッドを抜け出してその辺に投げっぱなしにしていたアウターに腕を通す。左右のポケットにそれぞれ財布とスマホを入れた事を確認し、玄関に置きっぱなしのキーケースを持った。髪はボサボサだし、ロンTは起き抜けのままだけど急いでるから仕方ない。そんな謎の言い訳を自分にしながら踵の潰れたスニーカーに足を突っ込んで勢いよく玄関を飛び出した。

    今日が定休日で本当に良かった。もし仕事なら真一郎くんに迷惑をかけるところだった。だってココにあんな風に呼ばれたら、オレは仕事そっちのけで向かってしまうに決まってるから。

    法定速度をギリギリ守りながら街を駆け抜ける。平日の昼間だというのに交通量は少なくて信号にも引っかからない。ココと違って神なんて全く信じてはいないけど、ここまで順調だとまるで「急げ」と言われているようでグローブの中の手のひらにジワリと汗が滲む。
    一番近くのパーキングにバイクを停め、正面入り口からビルへ入る。このビルにはココの会社の他にも大きな会社がいくつか入っているらしく、ロビーには暗い色のスーツを着た大人が大勢いた。そんな中で派手なスタジャンにデニム姿のオレは明らかな異分子だ。好奇の視線に舌打ちしそうになるのをグッと堪えて受付の姉ちゃんにココの名前を伝える。

    「ココノイハジメ」と口にするのは少しだけくすぐったかった。

    すでに話は通っていたようで呆気なく専用パスを渡され使い方の説明を受けた。右側のパネルにパスをタッチするとゲートが開きますのでエレベーターホールにお進みください。TK&KOグループ社のオフィスは向かって右側にあるAのエレベーターをご使用ください。それ以外はフロアには停まりませんのでお気を付けください。到着されましたら案内の方がお待ちとの事です。いってらっしゃいませ。
    1ミリも変わらない表情でスラスラと暗唱する姉ちゃんはプロの風格があった。
    いってきます、と軽く会釈をしてゲートを潜り、言われた通りAのエレベーターに乗り込む。20人以上乗れる大きな箱だったのに、エレベーターはオレひとりだけを乗せて音もなく上昇した。

    外の景色を眺める間も無く指定のフロアに到着した。静かに開いた扉の前には何度か会ったことのあるココの秘書(名前は知らねえ)が深々とお辞儀をしながら待ち構えていた。

    「お待ちしておりました。会長はこちらです」

    挨拶もそこそこに歩き出す。初めて来たココの会社は想像してたより堅苦しさがなく開放的でオシャレな作りをしていて、なんだかココの会社って感じがした。
    いくつかのブロックを通り過ぎフロアの一番奥へと案内される。さっきまでのガラス張りとは全然違う。外から中の様子が伺えないその部屋は見るからに特別な場所という感じがした。

    「会長は中でお待ちです。乾様をお連れしたら席を外すよう申し付けられておりますので私はこちらで失礼致します」

    秘書はそういうとまた深くお辞儀をしてそのまま立ち去ってしまった。小さな背中が見えなくなるまで見送ってから目の前の重そうな扉を開けた。

    「ココ、入るぞ」
    「もう入ってんじゃん」

    苦笑いを浮かべるココは少し見ない間にひとまわり小さくなったように見えた。なんだか顔色も悪い。いつもカッコ良くセットされた髪もくたびれている。

    「オマエちゃんと食ってんのかよ」
    「食ってるよ〜、週に5日は会食だもん」
    「寝れてんのか」
    「最近は2時間くらいかな」
    「それは昼寝と変わんねえよ」
    「昼寝だとしたら寝過ぎだよイヌピー」

    ククッ、と鼻の付け根にシワを寄せて笑う。その表情(かお)はガキの頃と変わらないはずなのにやっぱりどこか元気がない。

    「イヌピーそこ座ってて。オレ飲みもんとってくる」

    そう言うとココはデスクから立ち上がりオレが今入って来た扉から出て行ってしまった。

    なんだよ。喉乾いてたんなら言えよ。メッセージくれたら途中で買ってきてやったのに。そもそもそういうのってさっきの秘書とかがしてくれるもんなんじゃねえの?ココって偉いんじゃねえの?

    色々考えてみても答えには辿り着けそうにないし、扉も開く気配はない。仕方なくオレはココに勧められたソファで大人しく待つことにした。ココの好きそうな品の良い革張りのソファはS.S.MOTORSのものとは比べ物にならないほど座り心地が良かった。

    「ごめん、イヌピー。ちょっと捕まってた」

    両手に缶コーヒーを持ったココは出て行った時より更に疲れた様子で戻って来た。当たり前のようにオレの隣に座ると、ハァとひとつ溜息を吐いた。

    「別に良いけど、こう言う飲み物とか秘書が用意してくれるんじゃねえの? うちは真一郎くんに客が来てる時はオレがコーヒー持ってくぜ」
    「邪魔されたくないから人払いしてたんだけど、お茶の用意はお願いしとけば良かったわ……て、待って、あの人イヌピーにお茶汲みとかさせてんの?」
    「あの人って言うなよ。ああ、真一郎くんが客対応する時はそうするよ。オレが客対応する時は真一郎くんが淹れてくれるし。あんまねえけど」
    「良いなぁ……イヌピーの淹れたコーヒー飲みなが働ける環境ぉ……」

    低い背もたれに頭を預けるようにだらしなく座るココの姿を見て確かに人払いしておいて正解だなと思った。オレ以外のヤツに見られたら多分威厳が無くなりそうだ。

    「仕事、そんなヤベェの?」
    「業績は至って順調よ。ただ、デカめの新規取引と厄介なトラブル対応と稀咲のインフルが重なっただけ」
    「稀咲が復活する頃にオマエがぶっ倒れてなきゃ良いけど」
    「それ笑えねえよ。なぁ、もしオレがぶっ倒れたらイヌピー面倒みてくれる?」
    「良いぜ。うまいコーヒー淹れてやるよ」
    「あははッ、病人にコーヒーなんか出すなよ! オマエ本当ぶっ飛んでるわ」

    細められた目の下に濃いクマが浮かぶ。

    「なあココ、今日なんで呼んだ?」

    なんとなく今な気がしてずっと気になっていた事を聞いた。ココはゆっくりと視線を動かしてナナメ下から見上げるようにオレを見た。
    困ったような、泣きだしそうな、そんな顔をしていた。

    「……イヌピーさぁ、今日まだ時間ある?」
    「あぁ」
    「じゃあさ、30分……いや、15分で良いからオレに膝貸してくんない?」
    「膝?」
    「ダメ?」
    「ダメ、じゃねえけど……」

    言ってる意味が分からず戸惑うオレにゆるく笑ったココはそのまま倒れ込むようにオレの膝に頭を乗せた。

    「ははッ、固え」
    「だろうな」
    「でも最高」
    「んなわけ……」

    ねえだろ。と続くはずの言葉は口から出る前に消えてしまった。お世辞にも寝心地が良いとは言えないだろう膝枕でココは気持ち良さそうに目を閉じていた。おやすみ3秒はオレがよく言われる言葉だけど、これは3秒も経ってねえよ。

    目を閉じたココを観察する。周りから距離が近いと言われ続けて来たけどこんな距離でまじまじとココの顔を見たことってあっただろうか。なんだか新鮮だった。
    意外とまつ毛長えなとか、寝てる時まで難しい顔すんなよとか、飯食ってるって言ってたけどやっぱり痩せたなとか、オレにケアしろってうるさく言うくせにガサガサになってる唇とか、そういうの全部ひっくるめても整った顔してんなぁとか。普段意識しないようなところについ目がいってしまう。
    息してんのか怪しいくらい静かな寝息を立てて眠る。髪を撫でてみても、やつれた頬に触れても、目の下のクマを擦ってもココは目を覚さない。
    ふと思いついてポケットから携帯を取り出してカメラを起動する。起こさないように注意しながらいい感じの角度を探ってシャッターを切る。静かな部屋にカシャッという音がやけに大きく響いた。

    「……んだよ。おもんねー」

    画面の中にはキレイな顔で眠るココの姿が写っていた。ココが持ってるオレの寝顔は涎と半目でブッサイクな顔してんのにズルい。

    「オマエ本当は起きてんだろ」
    「……バレた?」

    ベッと舌をだしてココが目を開けた。

    「狸寝入りかよ。マジで、なんで今日呼んだ?」
    「最初は良い感じに眠れそうだったんだって。でもあんな風に触られたら流石に眠れないでしょ」

    だからイヌピーがわるい。
    そう言われると何も言えない。

    「……まだ、15分経ってねえだろ。もっかい寝ろよ。今度は触んねえから」
    「ううん、大丈夫。びっくりするくらい回復した」
    「ほんとかよ」
    「ほんとほんと!てかさぁ、全部落ち着いたら自分へのご褒美で会いに行こうって決めてたんだよ。でも、落ち着くどころか問題ばっか増えてくし、このタイミングで稀咲はインフルだし、ここ数年で一番最悪だったわ……気付いたらクリスマスも正月も会えなくてイヌピー不足でマジ死にそうだった……」

    ココは不貞腐れたようにオレの腹に顔を押し付け溜まりに溜まった鬱憤を吐き出しまくった。息の当たる部分が熱くてくすぐったい。
    癇癪を起こしたガキみたいに動くからセットされた髪はすっかりクシャクシャになっている。もつれた後頭部を手櫛で直してやればもっと撫でろといわんばかりに手のひらに頭を擦り付けてくる。スマートでカッコつけで落ち着いてて、昔からオトナみたいだったココがガキみたいにぐずるのは珍しい。

    「ココは偉いな。すげえ大変なのにひとりで頑張って」
    「イヌピー……!」
    「オレ、オマエに何にもしてやれないって思ってたから会うことで元気になれてたって言ってくれて、嬉しかった」
    「イヌピーだけがオレの元気の源だよ……」
    「ふふっ、じゃあココがまた無理って思った時はさ、オレん家来いよ。何時でも良いから。オレが寝ててもそのまま入って来い。これ、やるから」

    そう言ってキーケースから1本鍵を外してココに渡す。

    「本当はクリスマスに渡そうと思ってたんだ。遅くなっちまったけど、もらってくれるか?」
    「もらうもなにも、本当に良いの……? オレ、なにも用意できてないのに……」
    「別にお返しが欲しくてあげるわけじゃねえよ。それ、ちゃんと使えよ。オレもオマエに会いてえから」
    「イヌピー……!」

    情けない顔をしたココがオレに腕を回したところで扉の外からノックが聞こえた。

    「あぁ〜……時間切れか」

    ガックリと肩を落とすココは、それでもちゃんと顔を上げてもういつものココに切り替わっていた。
    ふかふかのソファから立ち上がり、スーツのシワを伸ばし髪の乱れを整える。この会社にいる人はきっとココがあんな風にグズる姿を見ることはない。そう思うと少しだけ胸の奥が満たされるような感覚がした。

    「イヌピー、今日は来てくれてありがとう」
    「オレも会いたかったから、別に良い」
    「イヌピーが素直だ……あぁ、もっと時間あったらなぁ……でも歯止め効かなくなるし……うぅ……」
    「歯止め効かせなくて良い日が決まったら連絡しろ。真一郎くんに有給もらうから」
    「イヌピー、それッ……?!」
    「じゃあな、ひとりで頑張りすぎんなよ」

    ココの言葉に無理矢理被せるようにして逃げるように部屋を出た。なんか大胆なことを言ってしまった気がして言ってから恥ずかしくて堪らない。きっとオレはすごく変な顔をしていたと思うのに受付の姉ちゃんは来た時と同じ表情でやっぱプロだなって思った。

    あれから5日が過ぎた。
    ココは鍵を使うことも連絡を寄越すこともなかったが、まあそんなもんだろうとオレからも何も言わなかった。
    ひと仕事つき、昼でも食うかとつなぎの上からアウターを羽織れば入れっぱなしにしていた携帯が震えていた。

    『きさき復活、今日行く』

    急いでいたのか、焦っていたのか、両方か。
    ココにしては珍しい短文にどんだけだよと笑いが込み上げる。
    電話の横に置きっぱなしのシフト表兼納品予定表を確認する。都合の良いことにオレは明後日休みだし、真一郎くんも急ぎの案件は無さそうだ。
    カツ丼の気分だったけど、今日は軽いもんにするかと昼メシのメニューを考えながら裏で作業中の真一郎くんに声をかける。

    「真一郎くん休憩入ります。あと、あした仕事休みます」

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