「こういうのも悪くないかもな」 この四月から、俺もとうとう高校三年生になった。
つい先日入学したばかりのような感覚だが、あっという間に受験生である。
穏やかな高校生活を送りたかったのに、一年生の冬、初詣で訪れた神社で猫又と遭遇してしまってからは毎日のように振り回される日々。
家でも外でも、おまけに学校にまでやってきてちょっかい出してくるのは正直やめてほしい。ツッコミを我慢するのも大変なんだ。
……なんてことを自室の勉強机に向かいながらつらつらと考えていると、机の上に丸まっていた猫又に二股の尻尾で頬を撫でられた。
「なにをぼーっとしてるんですか、少年」
「……なんでもねえよ」
こんなの、憧れていた高校生活とはほど遠い。
けれども、まあ……。
お題【憧れ】
(二九九字)