ちとたち短文④天気の良い休日。午前中に軽い買い物を終えた千歳と橘は、千歳の家でテレビを見ていた。寝っ転がった千歳をソファ代わりに容赦なく寄りかかっていた橘は、千歳の手がそろりと服の裾へ入り込んできたのに気づいた。
橘は特に構わず画面を見ていると、千歳の手は脇腹を通り腹へたどり着いた。ぐっと、腹のある一点を手のひらで押してくる。
「…なんね、くすぐったか」
「ん〜」
返ってきたのは気の抜けたような返事だったが、素肌を滑る手には明らかに別の意図があるように思える。どことなく行為を連想させるような動きに、橘は息を詰めた。
「千歳、やめんね」
「…やだ」
手が回っているのと反対の脇腹に、千歳が顔を押し付ける。空いていた腕も橘のウエストに回り抱きつくような姿勢になった。
「千歳」
はぁ、と熱のこもった息がTシャツ越しにかかる。咎めるような声色の橘を見上げて媚びるように擦り寄る。
「桔平…えっちせんね?」
ため息をついた橘はしかし、満更でもなさそうな顔でテレビの電源を切った。
「桔平…」
「っあと、ちょっとやけん…あっ…」
カーテン越しには西日が差し込み、橘の痴態を照らし出す。まだ明るいうちからこんなことをするなんて、付き合いたての橘であれば決して許さなかっただろう。千歳の奔放さに影響されたのだろうか。
「っはあ、エロ…」
千歳の膝の上で自ら挿入の準備をする橘は、ずっと眺めていたいとすら思える。快感か羞恥心からか頬を赤くして、漏れる声を抑えるように荒く息をする。恥ずかしいのかその顔は伏せられているが、時おり目線を上げては物欲しそうにその瞳を潤ませる。たまらない。
自身の快感を求めたい気持ちと橘を見ていたい気持ちがせめぎ合う。橘の膝へ添えた手に思わず力が入った。
「ほら、千歳。もうよかよ」
その手を急かされたと思ったのか、橘はローションでぬめった指を引き抜いて千歳の性器に触れる。
「待って…後ろ向いてくれんね」
背を向けた橘の腰を掴み、先端まで誘導する。ぷち、と入り口に少しだけ入れ込むと膝がぴくりと震えた。
「いれて、桔平」
「っこん体勢で…?んうっ…あ…」
ゆっくりと橘の中に肉棒が飲み込まれていく。何度見ても淫靡で、興奮をそそる情景だ。
「あ、ああっ…はぁ…」
「ん…偉かね」
根元までしっかりとくわえ込んだ橘を褒めるように、後ろから抱きしめる。千歳は橘とくっつくのが好きだ。特にこうして体を繋げている時は、所構わずどこかに触れていたいと思う。
「ちと、せ…」
「気持ちよかね、桔平?…ほら、ここ」
言いながら橘の下腹を撫でる。皮を隔てたこの奥に、自分が受け入れられていると思うと言いようもなく満ち足りた感覚になった。
「桔平、ちんちんピクピクしとる…むぞか」
「っ…千歳!耳元でそぎゃんこつ、ああっ!!」
ほとんど触っていないにも関わらず、頭をもたげていた橘の性器を握った。鈴口からとろりと零れて、千歳の手へ伝った。
「ほら…よだれば垂らして、俺んこつ欲しいち言いよる」
「っく、あっ!や…」
囁く度に内壁がきゅうきゅうと千歳を締めつける。そのせいで自分も快感を拾ってしまい、橘は肩を震わせた。
「きっぺ、どうして欲しい?ちんちん弄られたい?中突かれたい?」
「あ、う…ち、千歳……もう、う、動いてほしか…」
耳まで真っ赤にした橘が絞り出すような声で言った。何故か千歳はこうして、橘に選択を委ねることがある。橘としては千歳の好きなようにしてくれればいいし、何より自分の要望を伝えることがとてつもなく恥ずかしい。千歳のようにぽんぽん言葉が出てこない。
「桔平…っはあ…っ!」
「あ、うあっ!!ああっっ!!!はっっ、あ、んっ!!」
十分馴染んだ剛直が律動を始める。快感から逃げかけた体を背中から抱きすくめられて、橘は悲鳴をあげた。
「あぁっ…桔平が頑張ってくれたおかげで…っ中、とろとろやね…っ!はぁ…っ」
「っああ、ちとせ、ちとせっ!!」
「んんっ?なんね、桔平っ…!はあ…こっち…」
がっちりと腰を掴まれたまま体を捻ってキスをする。そのまま奥をくじられると、力が抜けて千歳に体重を預けてしまいそうになる。
「キス、好きとやろ桔平…?はぁ…蕩けた顔しとる…っ」
「っあ…お前もっ…とんだ、アホ面ばい…っん!」
夕日で影になった千歳の顔で、熱にぎらつく瞳だけがよく見えた。ようやく羞恥心のタガが外れた橘は目の前の唇へ再び噛み付いた。