水平線の太陽 太陽みたい。オレンジ色とクリーム色の塗装を施された丸みを帯びた艦体が港の入り口に見えたとき、そんなことを思った。もちろん知識としては頭に入っていたけれど、灰色に染まる視界の中で見るその姿は春の訪れを感じさせる朝の陽光のようでなんだか嬉しくなる。徐々に近付いてくる頃には、自身の艦がすっぽりと影に入るその大きさに目を見張ることになるのだが。
帰港の式典も滞りなく終わり、周囲の面々が自身の仕事に戻っていく中で岸壁の端に少し留まっていた。大方の人が捌けたとことで声を掛ける。
「あの、」
「あー。君がそこの新しい子か。さっき目が合ったからそうかなと。あんましここに居ないけどこれからよろしくな」
「くまのです。よろしくお願いします」
差し出された手を握る。長期航海で疲れの見える顔とは裏腹に力強く、温かかった。片付けがあるからと艦に引き上げていく彼を見送って、自身も艦へと戻る。着いて早々でお互い忙しいけれどゆっくりと話を聴きたいな、そう思案しつつタラップに足を掛けた。