お題 ネズミたちの通路マッドラットの小さな足が落ち葉をシャクリ、と踏みしめる。ボクらはチーズの幻覚を見ているであろうノラのネズミ達を追いかけていたものの、途中で見失ってしまい、立ち止まっていた。
「……しっかし、この場所は葉がやたら落ちてるな。歩きづらいったらないぜ」
「これだけたくさんの木が植わってるからねえ」
「ネズミ達も見つからねえし、うまくいかねえな……。クソっ!」
苦々しく顔をしかめるマッドラットの横顔は焦燥に満ちていて、まだ時間はあるよ、というボクの台詞は体に引っ込んだ。
自分の見てきた世界が胡散臭い神さまを名乗るヤツによる幻覚、ニセモノだと知って、ショックを受けていたのはつい先ほどの話だ。
あの時はクロネコから逃げるのに手一杯で気づかなかっただけで、ボクが思っている以上にマッドラットは事態を深刻に捉えていたのかも知れない、なんて考えていると、
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