僕だけが覚えている ある日の昼下がり、彼らの家に流れるゆったりとした空気を、電話の音が遮った。
「もしもし。……ええ、承っております。……はい、水道管の点検と修理ですね。お名前と住所をお願いします」
電話に出たマリオは、電話の横に置いているメモにペンを走らせた。
「はい、はい……え?」
頷きながら動かしていた手が、突如固まった。
「マメーリア?」
マリオが口した懐かしい名前に、本を読んでいたルイージも顔を上げた。
「兄さん、今のは仕事の依頼?」
通話を終えたマリオは受話器を戻し、ルイージの方に体を向ける。
「ああ。聞こえたと思うけど、マメーリアからだ」
「なんでボクらに……?」
「さぁ、詳しくは聞けなかったな。ただ、大きな屋敷らしくて時間がかかるだろうから、泊まってくれと言っていたよ」
1802