黒き森の赤き女じめじめとした暗い森に嫌でも目立つ大きな花が咲くのを知っているだろうか。
その森はどんな真夏の暑い日差しさえ遮ってしまうほど木々が茂り、一歩足を踏み入れれば嫌な湿度が肌にまとわりつく。
そして、その花はそんな暗い森の中でも浮き出て見えるほどの鮮やかな赤い花で、大柄な大人が両手を広げても足りないほどの大きさがある。
その花の異常さは大きさだけではない。
牡丹ようなの花の中心には、青緑色の肌をした若い女性の上半身が”生えて”いるのだ。
そう、それは人ではない。その瞳は青白い色をしていて、暗闇ではよく光る。
爪に見えるそれは長く、鋭い。
一度その植物の目に捕らわれれば、二度と森の外に出られないとも伝えられている。
僕は一度、それを見たことがある。
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