流る柳よ舟を漕げ太陽の光は高く、天窓からさんさんと降り注ぐ。
その眩しさに昼寝から目を覚まして、深く被っていた帽子が脱げ落ちていたことに気づいた。
「くぁ」
大欠伸をして体を伸ばす。革靴の脚を組み替える。革張りのソファがわずかに悲鳴を上げた。アジトの中で礼儀など気にしない、気にする必要もない。もっとも、外で気にするかと言われれば、泥棒やってますのでお察しくださいよ、という所だ。
「目を覚ましたか」
「ン」
声のする方に顔を向けた。部屋の隅、陽の光から逃げるような所に五ヱ門が座っていた。刀の手入れをしていたのか、気配も息の音も、或いは心音さえも聞き逃していた。
「刀とのお喋りは終わったか」
俺が尋ねると、五ヱ門は少し目を細めてから、す、と頷いた。その首の動きさえも、振り下ろされる刀を思わせる静かなもの。
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