2月、雪、渋谷「雪だ!」
誰かの声に、4人は弾かれたように上空を見た。
「本当だ…」
これも道行く誰かの声だ。
上空からは、はらはらと綿毛のように白いものが舞い降りていた。
雫の落ちる速度ではない。
「急いで帰ろう」
陽平の言葉に、3人の女は続く。
しばらく渋谷駅に向かって歩いているときだった。
「ね…陽平クン」
美奈子がそっと甘えるように陽平の右側を陣取った。
その腕が陽平の腕にぴったりと絡まる。これが美奈子なりの「手をつなぎたい」のアピールであることを陽平は理解していた。しかし、陽平は眉を少し跳ねさせて、二人の女をちらと見た。
「陽平クン」
だめ押しのように美奈子は言う。陽平は観念した。
「で、でも。俺、手が悴んじゃって」
陽平はポケットから手を出すこともせずに答える。当然のように白い息が陽平の視界を覆う。
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